待ちに待った開通!ホーチミン市メトロ1号線に乗って

2024年末、ホーチミン市都市鉄道(メトロ)1号線が国内初の地下区間がある鉄道として正式に開業しました。始発のベンタイン(Ben Thanh)駅から、終着駅のビンズオン(Binh Duong)省ジーアン(Di An)市にあるスオイティエンターミナル(Ben Xe Suoi Tien)駅まで乗って、新たな感覚で市内を探索します。

目次

新たな市民生活の支えとなるオールジャパンによる交通インフラ

12年かけて進められたメトロ1号線の工事は、日本が深く関わってきました。開業後の1カ月間は乗車が無料となり、開業を心待ちにしていた老若男女らが実際に乗車を体験。楽しく盛り上がっている様子が多く見られました。

 国際協力機構(JICA)の円借款事業「ホーチミン市都市鉄道建設事業(ベンタイン-スオイティエン間(1号線))」により、日本の鉄道技術で整備された1号線の正式な運転開始日は、2024年12月22日となりました。総投資額は43兆7570億VNDで、うちJICAからのODA融資資金は38兆3650億VNDに相当。日本からのベトナムに対するODAプロジェクトで過去最大

級のものとなり、両国間の友好と協力の象徴にもなっています。
 全長は19.7kmで、地下駅が3駅、高架駅が11駅の計14駅を設置しています。有名な観光スポットが集まる1区から始まり、多くの大学や住 宅 地、工 業 団 地 が あるビンタイン(Binh Thanh)区とトゥードゥック(Thu Duc)市を通り、ホーチミン市とビンズオン省の境目にある新東

部バスターミナル付近を終着としています。
 同市人民委員会によると、2035年までに総延長355kmの都市鉄道7路線の開通を目指しています。現在は、全長11km以上のベンタイン-タムルオン(Tham Luong)区間が2号線として建設準備段階に入っており、今後はホーチミン市内の交通渋滞の緩和や大気汚染の改善が期待されています。

地下区間を巡り異国情緒あふれる景観を再発見

地下区間の全3駅は市内中心部となる1区に位置し、それぞれの駅に独特なデザインが施されています。名所間の距離を歩くには少し遠い、しかしタクシーに乗るには近すぎるといった時にぴったりの移動手段です。

ベンタイン駅
Ben Thanh Station

 地下区間の最大駅であるベンタイン駅は、将来的にはさらに2、3A、4号線が乗り入れる予定です。駅舎は4階建てで、ベトナムを象徴する花である蓮をモチーフにした、日差しを取り込む大きな円形の天窓が設置されています。

オペラハウス駅
Opera House Station

 高級ホテルや豪華なレストランとショッピングモールが集まり、歴史的建造物も多いエリアにあるオペラハウス駅は、市民劇場内の模様を意識してデザインされています。

バーソン駅
Ba Son Station

 オフィスビルが立ち並ぶエリアにあるバーソン駅は、サイゴン川をイメージし、曲線を生かした模様が特徴的です。3番出口を出ると、ランドマーク81と斜張橋のバーソン橋が一望できます。

多様性を感じる駅近の宗教施設へ

ジャミアアル・ムスルマンモスク
Jamia Al-Musulman Mosque

 現地に移住してきた南インド出身のイスラム教徒のための礼拝堂として1935年に建てられたモスク。蓮の形をしたドームや菩提樹の葉のような先端が尖ったアーチなど、南アジアのイスラム教を色濃く残す建築様式となっています。

住: 66 Dong Du, Quan 1
営: 4:15~19:45
交: オペラハウス駅から徒歩4分

本堂へ参拝に入る前に足を洗えるスペースが設置されている

スブラマニアムスワミ寺院
Subramanian Swamy Temple

 19世紀に建てられ、ホーチミン市で最初のヒンドゥー教寺院と伝えられています。シヴァ神の息子で強力な神であるスブラマニアムスワミが祀られており、中でもカンボジアの役人から寄贈された9つの守護星の祭壇が置かれているのが特徴です。

住: 98 Nam Ky Khoi Nghia, Quan 1
営: 8:00~17:00
交:ベンタイン駅から徒歩6分、オペラハウス駅から徒歩6分

ヴィシュヌとラクシュミーに加え、蛇神ナーガに守られたリンガとヨーニ像もある

マリアマンヒンドゥー教寺院
Mariamman Hindu Temple

 19世紀後半に在越インド人の寄付によって建てられたヒンドゥー教寺院。祀られている女神マリアンマンは、南インドのタミル地方農村部の地母神とされ、医療や収穫、結婚と家族、そして子どもの神として崇拝されています。

毎日10時と19時から30分間、女神マリアンマンと神々に火を捧げる儀式が行われる

住: 45 Truong Dinh, Quan 1
営: 7:30~20:00
交:ベンタイン駅から徒歩6分

聖アンソニー・カトリック教会
Saint Anthony Catholic Church

 前身が1925年に建てられた教会で、アンソニ ー・カ ウ オンラン(Anthony Cau Ong Lanh)教区が設立されたのは1975年。教区になる以前は慈善社会センターとして、その後はフランシスコ会司祭の修道院と礼拝堂として機能していました。

敷地内に植物が多く置かれており、両側にある聖人や聖母マリアの像が平和な雰囲気を演出

住: 18 Phan Van Truong, Quan 1
営: 【礼拝時間】月~土曜5:00~/17:30~、
日曜5:30~/7:00~/17:00~
交: ベンタイン駅から徒歩10分

グエンアンニン通り(ハラールフード通り)
Nguyen An Ninh Street(Halal Food Street)

ベンタイン市場の横にあり、ハラールフードを提供する店が並ぶ。通常、例えばフォーは豚骨などを使って作られますが、本通りのフォーはハラールとして安心して味わえます。

日本と似て非なるもの?駅構内から車両までを比較調査

日本人の多くは乗車券の購入や電車の乗り降りに慣れ親しんでいますが、メトロ1号線は現地ならではの特性に合わせた調整が施されています。駅構内や車内をよく見ながら乗車の流れを確認し、日本の地下鉄と何が似ていて何が違うのかを探ってみましょう。

駅までのアクセス

 配 車 アプリや 公 共 自 転 車「TNGo(ティーエヌゴー)」のほか、最寄り駅が徒歩圏内にない場合でも1号線に簡単にアクセスできるよう、バスとバイクで移動する人のために特別な取り組みが行われています。

新たに導入された電動バスは、トゥードゥック市のシンボルであるひまわりが描 か れている。運 賃 は 一 般5000 ~ 6000VND、学 生3000VND

バス

 既存の市内バスに加えて、各駅から市内各地を結ぶ「フタバスラインズ/ FUTA Bus Lines」153~169番の計17路線が新設されました。バスの停留所や時刻表は、アプリ「BusMap」または「HCMC Metro HURC」で確認できます。

バイク

 市民の大半が駅までバイクで移動するため、交通手段を効率的に併用するために高架駅下には駐輪場が併設されています。もし専用駐輪場がない駅を利用する場合は、 周辺の駐車場やショッピングモールへの駐車がおすすめです。

外から入駅

 地下区間の駅は歩道に出入り口がありますが、すべてにエスカレーターやエレベーターが設置されているものではないため、階段の上り下りが困難な場合は、どの出入り口にあるか事前に調べておきましょう。高架区間の駅は道路の2車線の間に位置し、中央と路側両方に出入り口があります。

乗車券を購入

自動券売機と窓口で購入できるカード式の乗車券に加え、改札口でクレジットカードをタッチして通過することもできます。ベトナム人の場合はICチップ付きの身分証明書も利用できるようになっています。

乗車カード用とクレジットカード用の改札機が分かれている

ホームで電車待ち

 鉄道システムには日本の標準規格が採用されており、安全装置を取り付けた日本製の車両や信号が導入されています。転落防止に地下区間駅と高架区間駅の両方にホームのスクリーンドアが設置されており、点字ブロックや掲示板・放送案内、車両内の車いす専用スペースなどのバリアフリーへの工夫も盛り込まれています。

地下区間の駅(左写真)と高架区間の駅(右写真)のホームの様子
電車の到着時刻と、遅延する場合は何分遅れるかを示す標識がある

早速の乗車

 1号線は、17編成(3両編成、計51両)を運行し、1回で930人を運ぶことが可能です。設計最高速度は高架区間が110km/h、地下区間が80km/hとなっており、始発のベンタイン駅から終着のスオイティエンターミナル駅までの所要時間は約29分30秒。通常時は12分間隔、ラッシュ時は8分間隔で運行します。

車内には到着する駅を示す表示板があり、ベトナム語と英語でアナウンスが流れる
車両は内外とも青を基調としており、一年中暑いホーチミン市に涼しげな感じを与えてくれる

目的地に到着

 各駅での停車時間は30秒となっています。電車を降りたら、出口を見つけて好みの交通手段で目的地まで移動しましょう。ベトナムではエスカレーターを利用する際、右側に立つことが求められています。

高架区間の駅にはすべて屋根付きの歩行者用通路が完備されている
高架区間の駅にはすべて屋根付きの歩行者用通路が完備されている
運賃不足の場合は、改札通過前の乗り越し精算機で追加払いが可能

よりスムーズな乗車を!
ホーチミン市都市鉄道第1 会社(HURC)は、メトロの利用に関する必要な情報を含む、ベトナム語と英語対応の公式アプリ「HCMC Metro HURC」を開発・提供しています。App StoreとGoogle Playで入手可能で、メトロに乗る際は要チェック!

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