
約1000年の歴史を持つ、ハノイを代表する歴史地区です。世界遺産には登録されていませんが、ベトナム政府の指定遺産として保護され、建物の建て替えや景観が厳しく制限されています。そのため、フランス統治時代の建物や細い路地が今も残り、古い町並みが大切に守られています。絹織物や銀細工など、昔ながらの伝統を受け継ぐ店も多く見られます。週末には歩行者天国となるナイトマーケットが開かれ、屋台料理やショッピング、ストリートパフォーマンスを楽しむ人々でにぎわいます。昼夜を問わず活気あふれる、ハノイでも人気の散策エリアです。
ハノイ旧市街さんぽMAP
ハノイ旧市街は、間口が狭く奥行きが長い「チューブハウス」と呼ばれる独特の構造の建物が多く、細い通りが迷路のように入り組むエリアです。通りの名前の多くは「Hang(ハン)」という言葉から始まり、もともとその場所で扱われていた商品の名前が付けられています。現在では店の内容が変わっている通りも多いものの、通り名には当時の商いの名残が見られます。旧市街は「ハノイ36通り」と呼ばれることでも知られますが、実際には70本以上の通りがあり、「36」という数字はかつての同業組合の数に由来します。ベトナムではこのエリアを旧市街(Pho Co)と呼びます。旧市街の建物は1階が店舗、上階が住居として使われることも多く、商売と生活が同じ場所にあるのもこの街の特徴。通りを歩くと、店先で食事をする人や仕込みをする店主の姿など、日常の風景に触れることができます。

伝統と技が受け継がれる職人の通り 伝統と技が受け継がれる職人の通り
旧市街には、古くからの商人文化を今に伝える通りが数多く残っています。通りごとに職人や商人が集まり、それぞれの商いを営んできた歴史は、現在の街並みや通り名にも色濃く受け継がれています。なかでもハンバック(Hang Bac)通りとハンマー(Hang Ma)通りは、旧市街でも特によく知られています。銀細工の店や鮮やかな紙細工の店が並び、歩けば旧市街に息づく文化と人々の暮らしを感じられます。

ハンバック通り
Hang Bac
Bac(銀)の名のとおり、ハノイでも特に古い通りの一つで、古くから金銀細工の職人が集まる場所として知られてきました。15世紀頃、周辺の村から移り住んだ職人たちが銀貨の鋳造を始めたのが、この通りの始まりとされています。その後、貨幣の鋳造が別の都市で行われるようになると、この通りでは貨幣の交換が行われるようになりました。フランス統治時代には両替店が軒を連ね、「両替通り」と呼ばれるほど金融の中心地としてにぎわいました。現在も銀細工店やアクセサリー店、両替店が並び、通りの奥には職人たちの信仰の場であった金銀亭(Dinh Kim Ngan)も残っています。旧市街の商いの歴史と職人文化を今に伝える通りです。



チュオン・ヴァン(Truong Van)劇場
ハンバック通りにある劇場。カイルオン(Cai Luong)を上演しています。カイルオンは20世紀初頭にベトナム南部で生まれた伝統演劇で、伝統音楽を基に、せりふと歌を交えて物語を展開する大衆芸能です。現在も上演が続いており、ベトナムの伝統文化に触れられる舞台として多くの人に親しまれています。
ハンマー通り
Hang Ma
旧市街でも特に色彩豊かな通りとして知られています。通りには冠婚葬祭に使われる色とりどりの紙細工が並び、旧市街の中でもひときわ華やかな景観が広がります。「マー(Ma)」とは、法事などで使われる冥器を意味し、故人があの世で困らないよう紙でお金や家などを模して作られたものです。古くからこうした紙製品が作られ、祭祀や年中行事に欠かせない品として売られてきました。現在は中国やベトナム各地で作られた商品を仕入れて販売する店も増えましたが、獅子舞の張子の被り物などを昔ながらの手法で作る店も残っています。特に中秋節の時期には提灯やおもちゃが通りいっぱいに並び、家族連れや観光客でにぎわう旧市街屈指のイベントスポットとなります。





56 Hang Ma(ハン・マー)
住: 56 Hang Ma, Hoan Kiem, Hanoi
疲れたらここでひと休み



Ro Coffee(ロ・コーヒー)
住: 90 Hang Ma, Hoan Kiem, Hanoi
菓子とデザートの店が並ぶ甘い通り
ベトナムの街歩きで目に入るのが、色とりどりの甘いお菓子や果物を扱う店。温暖な気候で果物が豊富に育つことから、砂糖漬けの果物や甘い菓子は日常のおやつや来客時のお茶請けとして親しまれてきました。また、暑い気候の中で体力を補うための栄養源としても重宝されています。
ハンドゥオン通り
Hang Duong
旧市街で甘い菓子や果物を扱う店が集まる通りです。かつては菓子貿易の中心地として栄え、飴や砂糖菓子を売る店が多く並んでいました。現在では砂糖漬けの果物やドライフルーツを扱う店が軒を連ね、店先には色とりどりの商品が並びます。ショウガやココナッツ、マンゴー、タマリンドなどを使った菓子も多く、甘味と酸味が合わさった独特の味わいが特徴です。旧正月には贈り物や来客用の菓子を求める人々でにぎわい、ベトナムの甘味文化を感じられる通りとして親しまれています。現在も多くの菓子店が集まり、旧市街の商の歴史とともに受け継がれてきた甘味文化の面影を今に残しています。


Que Huong(クエ・フオン)
住: 7 Hang Duong, Hoan Kiem, Hanoi

トーティック通り
To Tich
約100mほどの短い通りで、ホアクアザム(Hoa Qua Dam)と呼ばれるフルーツデザートの店が並びます。マンゴーやパパイヤ、スイカなど色とりどりの果物を小さく切り、コンデンスミルクやシロップをかけて味わう甘いスイーツで、氷を加えてさっぱりとした味わいに仕上げるのが特徴です。通りにはこうした店が軒を連ね、店先の小さな椅子とテーブルに腰掛けて気軽に楽しむ人の姿が見られます。



Hoa Beo(ホア・ベオ)
住: 17 To Tich, Hoan Kiem, Hanoi
ハンジャイ通り
Hang Giay
袋菓子やビスケット、ナッツなどを扱う店が並びます。店先には商品が山のように積まれ、色鮮やかなパッケージが軒先いっぱいに並ぶにぎやかな景観が広がります。ココナッツ菓子やゴマの焼き菓子、ピーナッツを使った菓子など、東南アジアで親しまれている素材を使った商品も多く、昔ながらの菓子問屋街の面影を今に残しています。旧市街の市場や小売店に卸す菓子を扱う店も多く、地元の人々が日常的に仕入れに訪れる通りです。近年は個包装の輸入菓子やキャンディーなども並び、昔ながらの菓子から土産向きの商品まで幅広くそろっています。




シルクと仕立ての店が並ぶ布の通り
ハノイ旧市街では、古くから織物や仕立てなど衣服に関わる商いが発展してきました。王都タンロンとして栄えた時代には、宮廷や官僚の衣服を支える織物や仕立ての職人が集まり、装いに関わる通りが形成されました。現在も衣料や履物を扱う店が並び、色とりどりの布地や衣服が店先を彩ります。ベトナムではアオザイ(Ao Dai)やスーツなど、特別な衣服は仕立てることも多いため、採寸してオーダーメイドで作れる店も多く見られます。




ハンガイ通り
Hang Gai
古くから絹織物の取引で栄えた通りで、旧市街を代表する商いの一つとして知られています。通り名の「ガイ(Gai)」は麻の繊維を意味し、もとは麻や繊維製品を扱う商人が集まったことに由来します。その後、絹織物の取引が盛んになるにつれてシルク製品を扱う店が増え、フランス統治時代には「シルクロード」と呼ばれるようになりました。ハノイ近郊にはヴァンフック村など絹織物で知られる村があり、そうした地域で織られたシルクがこの通りに集まり、今も取引が行われています。現在も通りにはシルク製品や色とりどりの布地を扱う店が軒を連ね、スカーフや衣料品、仕立て用の生地などが豊富にそろいます。近年は刺繍入りのスカーフやテーブルクロスなどの製品も多く見られます。

ロンヴァンカン通り
Luong Van Can
衣料品店や仕立て店が並ぶ通りで、特に伝統衣装アオザイを扱う店が多く集まっています。アオザイは体のラインに沿った細身のデザインが特徴のベトナムの伝統衣装で、結婚式や式典、学校の制服としても着用されるなど、現在も人々の生活に根付いた衣装です。また周辺には文房具店や雑貨店、軽食店なども並びます。このあたりには学校や書店も多く、学生や家族連れが訪れることも多い通りです。衣料や雑貨などさまざまな店が集まり、日常の買い物の場として親しまれています。

ハンザウ通り
Hang Dau
サンダルや履物を扱う店が多く集まる通りです。通り名の「ザウ(Dau)」は油を意味し、かつては灯油や食用油を扱う店が並んでいました。近代化が進むにつれて油の商いは減り、店の入れ替わりとともに履物を扱う店が増えたといわれます。通りには革製やカラフルなデザインなどさまざまなサンダルが並びます。中には好みの形や色を選び、その場で仕立ててもらえる店もあります。ベトナムでは一年を通してサンダルを履く人も多く、日常の履物として広く親しまれています。




Trung Tam Giay Dep Da Cao Cap
(チュン・タン・ザイ・デップ・ザー・カオ・カップ)
住: 15 Hang Dau, Hoan Kiem, Hanoi
市場の活気と日常が交差する暮らしの通り
果物や野菜、乾物、肉や海鮮、生活雑貨などを扱う店が並び、通り全体に活気があふれる一角。ドンスアン(Dong Xuan)市場の周辺には、露店や小さな商店が連なる通りが続きます。通りの両側には食材や生活用品を扱う店がぎっしり。地元の人々が日々の買い物に訪れる、旧市街の暮らしを感じられるエリアです。
グエン・ティエン・トゥアット通り
Nguyen Thien Thuat
ドラゴンフルーツやマンゴー、バナナなどの果物をはじめ、野菜や香辛料などが店先に山のように積まれています。新鮮な魚のほか、干しエビや干しイカなども並びます。特に欠かせないのが香草です。ベトナムでは臭み消しや香り付けのために香草を料理に使う習慣があり、種類も豊富です。このエリアはドンスアン市場の周辺に広がる市場圏の一部で、市場からあふれた商いが周辺の通りへ広がったといわれています。近郊の農村から運ばれてくる食材も多く、旧市街の市場を支える通りの一つとなっています。




ハンコアイ通り
Hang Khoai
ドンスアン市場の北側に約360mにわたって続く通り。コーヒーポットやフライパン、鍋などの台所用品を扱う店が並び、生活雑貨が所狭しと並びます。通り名の「コアイ(Khoai)」は芋を意味し、かつてはサツマイモなどの農産物を扱う商人が集まったことに由来するといわれています。現在はアルミ製の鍋や金属製のポット、やかんなど実用的な調理器具が多く見られます。商品は店先や歩道にも積み上げられ、まとめて販売されることも多く、道具が山のように並ぶ光景が広がります。ドンスアン市場の周辺に広がる路上市場の一角として、家庭用品や台所道具を扱う店が集まる通りです。



タインハー通り
Thanh Ha
ク ア ン ト ゥ オ ン 門(O Quan Chuong)の 近くからグエン・ティエン・トゥアット通りへと東西に伸びる、長さ約150mの通りです。現在は肉や海鮮を扱う路上市場が広がり、豚肉や鶏肉、魚やエビなどの食材が店先に並びます。店先では肉や魚をその場でさばく様子も見られ、炭火で焼く肉や魚の香ばしい匂いが通りに漂います。この一帯はかつてタインハー村の土地で、紅河に近い立地から山や川を通じて運ばれてきた産物の取引も行われていました。その名残から、ドンスアン市場の周辺に広がる市場圏の一角として食材を扱う店が集まる通りとなっています。





豚肉や鶏肉、魚、エビなどの生鮮食品を扱う店が並ぶ。その場でさばく様子も見られる
夜の熱気に包まれるにぎやかな通り
日が暮れると、旧市街は昼間とは違う活気を見せ始めます。通りには露店が並び、食事や買い物をする人々でにぎわいます。すぐ近くのターヒエン(Ta Hien)通りでは、小さな椅子に腰かけてビールを飲みながら語らう人々の姿も見られます。ナイトマーケットやビアストリートがあるこのエリアは、地元の人々や外国人旅行者が集まり、交流の場として親しまれています。
ナイトマーケット
ハンダー(Hang Dao)通りからドンスアン市場周辺まで約3kmにわたって広がるナイトマーケットでは、数多くの露店が並びます。通りには食べ歩きができる軽食店のほか、フォー(Pho)や揚げ春巻きなどの屋台、雑貨や衣類、アクセサリーを扱う店が並びます。旧市街には夜になると露店が集まる夜市の文化があり、こうした商いの風景を背景に現在のナイトマーケットが整備されました。金~日曜の夜(19時~23時頃)には歩行者天国となって開催され、多くの観光客や地元の人々でにぎわいます。音楽演奏やダンスなどのストリートパフォーマンスが行われることもあり、旧市街の夜を彩るイベントとして親しまれています。買い物を楽しみながら夜の旧市街を散策できる場所で、昼間とはまた違ったにぎやかな雰囲気が広がります。





ターヒエン通り
Ta Hien
昼間は比較的落ち着いた雰囲気のターヒエン通りも、夜になるとにぎわいを見せます。バーやビアホールが営業を始め、小さな椅子やテーブルが通りに並びます。観光客や地元の人々が集まり、あたりは活気に包まれます。ここは「ビアストリート」とも呼ばれ、ベトナムの生ビール「ビアホイ(Bia Hoi)」を気軽に楽しめる場所として知られています。軽い味わいのビールを、茹でたピーナッツや揚げ豆腐などの軽食とともに味わうのが定番。約200mの短い通りですが、外国人旅行者も多く集まることから「外国人通り(Pho Tay)」とも呼ばれています。アルコール度数が低く、気軽に飲めるビアホイは、暑いハノイの夜にぴったりの飲み物。小さなプラスチックの椅子に座り、ビールを片手に語らう人々の姿は、ハノイの夜を象徴する風景の一つとなっています。

