ベトナム語に見る文化や考え方



ベトナム語学習のメリット

筆者が運営するYou Tubeチャンネルのメインコンテンツのひとつに、ベトナム語の学習方法を紹介しています。40代終盤から開始したベトナム語学習の様子や困ったこと、実際に話せるようになる過程をシェアしています。私はかんたんなベトナム語会話ができる程度ですが、全く話せないのと、少しでも話せるのとでは、ベトナムの皆さんとの距離感や信頼関係に大きな違いが出てきます。例えば、北部ハノイの場合、初対面や通りすがりの外国人としてベトナムの皆さんと接すると、そっけなかったり、壁を感じる対応をされることが多いですが、ほんの少しでもベトナム語で話しかけると、途端に素敵な笑顔を見せてくれたり、色々と親身になってやり取りしたりしてくれます。ベトナム語を学習する外国人はめずらしいので、ベトナムの皆さんにとっては、特別な外国人・日本人として、相手の印象に強く残ります。久しぶりに会って、こちらが相手のことを忘れていても、相手は覚えてくれていて、しかも良い印象を持ってくれていることが多いです。

ベトナムでは、ホテルや空港などを除くと英語がほとんど通じないため、ベトナム滞在中の行動範囲が広がったり、難易度がぐっと下がったりするのも大きなメリットです。職場にベトナム人がいる場合は、信頼関係も圧倒的に高まります。



学習を通じて感じたこと

個人的に、「言語は文化を表している」と強く感じます。例えば、英語と日本語の関係でも、英語はストレートで自己の主張がはっきりした文章になりやすく、逆に日本語は相手に委ねる表現で曖昧になりやすいといった特徴がありますが、ベトナム語にもしっかりと特徴があります。まず一番に感じるのが人称の使い方です。特に一人称の「私」や、二人称の「あなた」に大きな特徴があります。英語なら一人称はI、二人称はYouですが、ベトナム語の場合は、自分と相手の年齢・性別によって変わります。英語のIを例にすると、ベトナム語はToiという単語になりますが、実際の会話ではそれが使われることはあまりありません。Toiは日本語なら「わたくし」の様なやや改まった表現になるため、文章や講演などで使うことはあっても、日常会話ではあまり使いません。自分と会話する相手の年齢・性別によって相対的に変わるので、相手から見て、自分がお兄さんならAnh、お姉さんならChi、相手の親よりは若いぐらいのおじさんならChu、親より上ならBac、女性でおばさんならCo、自分が相手より年下の場合はEmと呼びます。出張者などでベトナム人の店員さんを呼ぶ時は「エモイ」と覚えている方がいるかもしれませんが、これは今お伝えした年下の人称Emを使って相手をEm Oiと呼んでいます。なので、相手が年上男性の場合は、エモイと呼ぶのは失礼になります。ベトナムは儒教の影響を受けており、年功序列の文化があります。つまり年上が絶対的に強く、敬意を持って接する必要がありますし、敬語表現も存在します。最初から全部覚えるのは大変なので、相手や自分が年上の男性ならAnh (お兄さん)。年上女性ならChi(お姉さん)。年下ならば男女ともにEm(弟・妹実際の兄弟である必要はない)から覚えて使ってみてください。人称を適切に使えると、「あ、この人はベトナムのことを解っているな」と感じてもらえます。



過程よりも結果が大事?

ベトナム語を勉強している中で感じたことの2つ目は、「まだなのか」「もう済んでいるのか?」が重要で、過程はあまり気にしないということです。単語としては「まだ」=Chua、「もう済んでいる・成立している」=Roiという単語が日常会話で頻繁に使われます。「Ăn cơm chưa?(もうご飯食べた?)」「Anh chưa ăn((年上男性の)私はまだ食べてない)」や、「Anh ăn rồi(もう食べた)」などと答えます。この「もうご飯食べましたか?」という表現は、ベトナムにおいては、あいさつの様に使われるので、知り合いではない人からも言われることがあります。ベトナムにおいて「食べる」=Anは大事なことで、ほとんどの人は日本人と違って朝食はまず抜くことがありません。時間がなくても途中で何かを買ってきて職場についてから食べる人も多いです。つまりこの「ご飯食べましたか?」は、英語のHow are you?のように、相手に対する気遣いが含まれています。

ほかにも、「Hiểu chưa?(もう解った?)」「Hiểu rồi(もう解った)」など、仕事場などでもよく耳にします。なお、「Hiểu chưa?」は直訳すると「まだわからないのか」となるため、日本人的には失礼に感じますが、ベトナムではこの聞き方が普通なので失礼にはなりません。レストランなどで「注文は以上。」と言いたい場合も、Roiの一言で済みます。実際にはGọi món ăn xong rồi.(料理の注文が完了した)」というのがよりわかりやすい表現ですが、実際の会話では、「Chưa? Rồi」だけで会話が成立することもよくあります。とにかく「もう済んだのか」「まだなのか?」が大事で、日本人に比べると、ストレートでややせっかちな部分が現れています。 ということで、今回はベトナム語で感じるベトナム文化についてご紹介しました。ベトナム語を少しでも勉強していくと、日本との文化や考え方の違いが、言語の違いになっていることも多く、そこを知らずに単純に辞書的に言葉を置き換えようとすると、理解が難しい側面もあります。逆に文化や考え方の違いが含まれているので、ベトナム語を少しでも話せる様になると、ネイティブから「ベトナムに理解がある日本人」と受け止めてもらえる様になります。Channel Kazではベトナム語の勉強方法や、ベトナムでの生活・日常はもちろん、ベトナムの旅行などについても役立つ情報をたくさん紹介しています。気になった方はぜひチャンネルにも遊びに来てください。

著者

Kaz

プロフィール

1970年生まれ
日系ベトナムIT企業現地採用ITアドバイザー
静岡県浜松出身
ベトナム語独学歴3年半
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【YouTube】https://www.youtube.com/c/ChannelKaz

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