長引く円安
円安の解消が一向に見えてこない昨今。「ドル高の海外で働いて、高収入や貯金も楽々」といったニュースを目にすることがよくあります。ベトナムの通貨はベトナムドン(VND)ですが、VNDと円のレートも、対米ドル(USD)を指標に決まっていくので、日本円はVNDに対しても円安になっています。そうなると、ベトナムで働くなら、現地採用で現地通貨をもらった方が得に見えるかもしれませんが、そうとばかりも言えません。
今回は私自身が実際に現地採用として働いた感想、良かったことや困ったこと、個人的にはどちらが良いと感じているかについてお話しします。
ベトナムでの働き方
私は当初、ベトナムには出張でやってきていました。毎月一週間程度はベトナムに出張、コロナの際は隔離で数カ月帰国できないということもありましたが、基本は出張。その後転職して現地採用で2年間働き、現在は日本で採用され、現地へ出向という働き方をしています。つまり、出張・現地採用・出向の立場で海外勤務を経験しています。今回は特に、現地採用について深堀していきます。
現地採用の良し悪し
現地採用の場合、給料は当然、現地の会社から支払われるため、全て現地での収入となり、日本では収入がない状態になります。税金や健康保険、社会保障費なども、ベトナムの法律に従って課税または給与から天引きされます。ベトナムの所得税は、外国人居住者の場合、5%から最大35%の累進課税となり、5%は500万VND(約3万円)、35%は8000万VND(約48万円)以上に対して課税され、その間は5%刻みでそれぞれ所得額が規定されています。累進課税なのですぐに35%の課税になるわけではありませんが、なかなか厳しい金額です。
基礎控除、扶養控除、保険料控除などの仕組みもありますが、個人ではなかなか計算が難しいです。50歳を超えている私の場合、かなり大雑把に言ってしまえば、税金やその他で3割程度は消えていく感覚です。また、現地で支給される給与がVNDの場合は、円にしようとするとかなりレートが悪く、大幅に目減りします。一方、給与がUSDで支払われる場合は、一般的にUSD/円レートを元に計算されるため、円安が進行している現在は、得をします。ちなみに円/USDレートの計算は、給与支給日のレートで決まる会社もあれば、特定の日付のレートを元に一定期間固定になっている場合もあります。前者の場合、給与支給日前は、まるでFXトレードのように、円相場が気になって仕方がありません。
この2年間で円安が大きく進行したため、当初想定していた金額よりも、為替だけでかなり給与額が上がったのも事実で、うれしい誤算でした。
では、やはり現地採用がお得!となるのかといえば、そうとばかりは言えません。この辺りはそれぞれの生活スタイル、家族構成などで大きく変わってくるかもしれませんが、私の場合は完全移住ではなく、日本に家族を残しています。若くもないので健康や老後のことなども心配です。現地採用の場合、日本の住民票を抜いて、ベトナムで生活する人がほとんどです。その場合、日本の健康保険は失うので、日本で医療を受けると保険的を受けられません。無論、ベトナム現地の医療保険に入ることはできますので、現地での医療を受けることはできます。年金なども日本での支払いを停止するという人も多いでしょう。支給開始年齢がどんどん高齢化し、支給額も下がっているので、いざ自分たちが支給年齢になった際にどれだけもらえるのかという心配はありますが、ベトナムに行ったきりではなく、いつか日本に戻ろうと考えている場合。いざ日本に帰った時のことを考えると、いろいろ心配になります。 現地採用の休暇も注意が必要です。一般的に現地採用の場合は、現地の土・日曜・祝日が休みとなるケースがほとんどです。ご存知の方も多いかもしれませんが、ベトナムは日本に比べると祝日が圧倒的に少なく、連休も旧正月のテト、5月に3〜4連休があって、それでおしまいです。夏休みもありません。西暦の年末年始も大型連休にはならず、元旦が祝日としてお休みになるぐらいです。有給も年単位で付与すると、一気にとって辞める人が出てくるので、月単位で1日ずつ支給するといった会社もよくあります。
個人的な選択は
筆者の場合、現在は日本での採用、現地出向のスタイルとなっています。福利厚生などを含め、やはり日本企業での雇用は安心です。2年の現地採用を経て、日本での雇用に戻った正直な感想です。
無論、これは会社によって採用スタイルが異なるため、希望する会社が思い通りの採用スタイルをとってくれるとは限りません。筆者は幸いなことにやりがいのある仕事、環境を得ることができたことに大変に感謝しており、結果的に気力もアップしています。
ベトナムで働きたいと考えている皆さんも、ご自身がやりたいこと、自身の人生設計などを踏まえて、どのような会社でどんな仕事をして、将来どうなりたいのかを考えながら、働き方を考えてみてください。
著者
Kaz
プロフィール
1970年生まれ
日系ベトナムIT企業現地採用ITアドバイザー
静岡県浜松出身
ベトナム語独学歴3年半
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