ベトナム初の都市鉄道として、ハノイ都市鉄道(Duong Sat Do Thi Ha Noi)の2A号線(Tuyen 2A)が正式に営業開始したのは2021年11月。現在も市内では複数の場所で新路線・延伸の工事が行われており、3号線の一部区間の開業も間近とみられています。今号は開業済みの2A号線に改めて注目し、全12駅を探索してきました。
交通渋滞の解消に期待がかかるハノイ初の都市鉄道路線
2008年に締結された中国の政府開発援助(ODA)を受けて建設された2A号線。2011年10月に着工し、全長13.1km、12の高架駅があり、ドンダー(Dong Da)区のカットリン(Cat Linh)駅が起点、ハドン(Ha Dong)区のイエンギア(Yen Nghia)駅が終点となっています。本項ではまず、電車の乗り方から案内します。
2A号線の乗り方
➀ 乗車券を買う
片道乗車券の場合
切符販売機で目的地の駅名を選択し、5万VND以下の紙幣で支払いができます。英語表示可。
1日または1カ月乗り放題の乗車券の場合
各駅に設置された窓口で購入できます。1日または1カ月乗車券の場合はまず、専用の紙のチケットが発行され、それを各駅の窓口で提示すると、その都度片道乗車券用のカードを受け取れるシステムになっており、専用のカードは用意されていません。
➁ 改札を通る
片道乗車券のカードを改札機にタッチすると通過できます。
➂ 目的地に到着
片道乗車券のカードを指定の場所に入れるとゲートが開き、外へと出られます。
まずは始発のカットリン駅(Ga Cat Linh)へ!
カットリン通り、ハオナム(Hao Nam)通り、ザンヴォー(Giang Vo)通り、ザンヴァンミン(Giang Van Minh) 通りの5差路交差点に位置するカットリン駅。今後は主要駅としての役割が期待されており、3号線の乗換駅にもなる予定です。駅舎は3階建てで、総面積は約1.8haと12駅中最大。乗客が出入りする1階は、ハノイや鉄道事業の関連写真が展示されています。2階は乗車券売り場と案内所、改札口。3階は電車のホームとなっています。
ベトナムチェオ劇場/Nha Hat Cheo Viet Nam
駅から約290m
住: 71 Kim Ma, Ba Dinh
駅から約290m
住: 71 Kim Ma, Ba Dinh
10世紀からベトナム北部の紅河デルタで盛んに行われてきた伝統舞台芸術「チェオ」の保存と継承を使命として、1951年に設立された国営劇場。公演は、毎週定期的に開催されます。
文廟/Van Mieu
駅から約900m
住: 58 Quoc Tu Giam, Dong Da
ハノイの観光名所の1つで、1000年近く前に建設されました。儒教の創始者の孔子を祀っているほか、ベトナム最古の大学があった場所でもあり、多くのベトナム人が高校や大学の合格祈願に訪れます。
ベトナム国立美術博物館/Bao Tang My Thuat Viet Nam
駅から約1.2km
住: 66 Nguyen Thai Hoc, Ba Dinh
フランス植民地時代にフランス高官の子女のための寄宿学校として建設。1962年にベトナム建築の要素を取り入れ、価値ある芸術作品を収集、展示、保存する場所に改修されました。
ローカル感満載のラータイン駅(Ga La Thanh)
ホアンカウ(Hoang Cau)通りにあり、賑やかな住宅街との交差点付近に位置する駅。周辺はアパートやオフィスビルが密集し、ローカルな飲食店やカフェが充実しています。
ベトナム国立音楽院/Hoc Vien Am Nhac Quoc Gia Viet Nam
駅から約300m
住: 77 Hao Nam, Dong Da
1956年に設立され、ベトナムにおける高度な音楽の研究、演奏、教育に力を入れています。ベトナム国立交響楽団(VNSO)のコンサートなど、様々な音楽ライブの会場にもなっています。
ドンダー湖/Ho Dong Da
駅から約300m
住: O Cho Dua, Dong Da
ホアンカウ通りに面した公共の運動スペースに加え、 湖の大部分を囲むマイアイントゥアン(Mai Anh Tuan)通りにはベトナム料理店やおしゃれなカフェなどが豊富にあり、食事に困りません。
レジャースポットが充実したタイハー駅(Ga Thai Ha)
ドンダー区で最も人口密度の高い地区の1つである、ホアンカウ通り、タイハー通り、イエンラン(Yen Lang)通りの交差点の近くに位置するタイハー駅。同エリアは、電化製品の販売店や修理屋が多く集まっていることで知られています。
ナショナルシネマセンター/Trung Tam Chieu Phim Quoc Gia
駅から約650m
住: 87 Lang Ha, Dong Da
1997年に完成したベトナム文化スポーツ観光省傘下の映画館。国内外の最新話題作を上映するほか、国際交流基金が毎年主催する日本映画祭など各国の映画関連イベントの会場にもなっています。
コンプレックス01/Complex 01
駅から約1.2km
住: 29/31/167 Tay Son, Dong Da
2020年にオープンした若者向けの複合娯楽施設。フードコート
やローカルブランドショップに加え、ハンドメイド体験ワークショップ、映画上映、音楽ライブなど、楽しみ方が盛りだくさんです。
川の上に浮かぶラン駅(Ga Lang)
道路の中央に建てられた他の駅とは異なり、ラン通りとザップニャット(Giap Nhat)通りに挟まれたトーリック(To Lich)川の上に建てられているのが特徴です。ガートゥソー(Nga Tu So)卸売市場があることで有名な交差点の近くに位置し、2A号線のドンダー区内の最終駅となっています。
ヴィンコムメガモールローヤルシティー/Vincom Mega Mall Royal City
駅から約850m
住: 72 Nguyen Trai, Thanh Xuan
総面積230haに及ぶベトナム最大級の地下複合商業施設。ショップ、飲食店、映画館のほか、ウォーターパーク、ゲームセンター、スケートリンクなどが充実しており、子どもから大人まで1日中楽しめます。
フックカイン寺/To Dinh Phuc Khanh
駅から約750m
住: 382 Tay Son, Dong Da
後黎(Hau Le)朝(1428~1789年)の時代に建設され、1988年に国家歴史文化遺跡に指定された寺院。願いが必ず叶うという強力なパワーを持った寺院とされており、多くの人々が参拝に訪れ、特に旧正月は数千人に達することがあります。
交差点付近には歩行者や自転車利用者のための地下通路があり、道路を横断する必要なく、周辺のスポットまで簡単に歩いて行ける
2つの区を結ぶトゥオンディン駅(Ga Thuong Dinh)
ラン通りを右折しグエンチャイ(Nguyen Trai)通りに入って最初の駅になります。ドンダー区とタインスアン(Thanh Xuan)区の中間に位置し、周辺は国有企業や工場が多く集まっています。
タンロン・タバコ会社/Cong Ty Thuoc La Thang Long
駅から約450m
住: 235 Nguyen Trai, Thanh Xuan
1957年に設立された、タバコ関連製品の製造・販売を行う企
業。2023年発表のハノイ市人民委員会の都市計画によると、今後5年以内にハノイの郊外への移転が予定されています。
人類学博物館/Bao Tang Nhan Hoc
駅から約600m
住: 336 Nguyen Trai, Thanh Xuan
ハノイ国家大学人文社会科学大学の敷地内に位置し、ベトナムの文化財の保存、修復、展示活動を行っています。同学の学生や研究員のための開館だけでなく、外部の訪問者も歓迎しています。
大型交差点にあるヴァインダイ3駅(Ga Vanh Dai 3)
グエンチャイ通りと、ハノイで最初に整備された環状道路である環状3号線との交差点に位置します。高架、地上、地下を含む4層構造とハノイ最大級の交差点であり、毎日の交通量が非常に多く、主要の渋滞地区にもなっています。
トゥオンディン靴販売センター/Trung Tam Thuong Mai Giay Thuong Dinh
駅から約220m
住: 277 Nguyen Trai, Thanh Xuan
60年以上の歴史を持つシューズメーカーの店舗。手頃な価格の良質な安全靴や運動靴を製造販売し、90年代にブームとなった人気ブランドです。
人類学博物館/Bao Tang Nhan Hoc
駅から約1.2km
住: 214 Nguyen Xien, Thanh Xuan
ロンドンのカーナビーストリートをモチーフにしたウォーキングストリートで、明るい街路空間と目を引く装飾が特徴です。営業は土・日曜で、飲食店に加え、マジックショーやカーナバルショーなども行われます。
学生の活気に溢れたフンコアン駅(Ga Phung Khoang)
ハドン区内にある6つの駅のうちの第一駅です。人口密度の高いエリアにあり、周辺には多くの公立大学があるため、フンコアン駅の利用者のほとんどが学生や教職員です。
フンコアン市場/Cho Phung Khoang
駅から約220m
住: 33 Phung Khoang, Nam Tu Liem
同地区の主要な市場で、常に賑やかな雰囲気に包まれています。食材のほか、衣料品店、花屋、屋台もたくさん並んでいます。
フンコアン教会/Nha Tho Giao Xu Phung Khoang
駅から約800m
住: 161 Phung Khoang, Nam Tu Liem
ハノイ教区内にある29教会の1つであり、ロザリオの聖母を守護聖人としています。20世紀になると地域の教区民の数は数百人に達し、そのニーズに応えるために建設され、1914年に完成しました。
ハドン区一好立地のヴァンクアン駅(Ga Van Quan)
かつてハドンバスターミナルがあった敷地上に建てられ、人の往来が盛んなハドン区の中心部に位置します。周辺は住宅街で、ハドン区で最も活気のあるエリアともされています。
ホーグオムプラザ/Ho Guom Plaza
駅から約300m
住: 102 Tran Phu, Ha Dong
地下3階と地上29階建ての複合商業施設です。ショッピングモール、貸事務所、アパートなど多様な機能を備えており、地 元 の人 に人 気 の買 い物スポットです。
ヴァンクアン湖/Ho Van Quan
駅から約1km
住: Ho Van Quan, Ha Dong
湖沿いにはカフェや飲食店、飲み屋が豊富にあり、清々しい空気を楽しみながらゆったりとした時間を過ごすことができ、ハドン区の居住者にとっての人気スポットです。
区名にちなんだハドン駅(Ga Ha Dong)
総合病院、伝統医療病院、眼科病院、市場、郵便局などの施設が整ったエリア内にあります。近くにはインターナショナルスクールが複数あるほか、イオンモールハドンまでは4km強の距離です。
ヴァンフック・シルク村/Lang Lua Van Phuc
駅から約1.4km
住: 69 Van Phuc, Ha Dong
高品質の伝統シルク製品で知られているヴァンフック・シルク村は、1000年以上の歴史があり、ベトナムで最も古いシルクの手工芸村です。現在、300世帯近くが絹織物に従事しており、毎年約250万~300万m2のシルクを製造しています。
ハノイのお土産にシルク製品を
シルク生地以外に、アオザイ、スカーフ、ワンピースなど、シルクで作られた幅広い製品が販売されています。また、生地を選びオーダーメイドできる仕立て屋もあります。
糸繰りや絹織りの見学も可
糸繰りや絹織りの工程を無料で見学できます。どの過程においても、職人は細心の注意を払い、機械による作業であってもしっかりと監視を行っています。
布の切れ端で手作り体験
足が不 自 由なクオン(Cuong)さんが設立した「ヴンアート/Vun Art」では、シルクの切れ端を活用しトートバッグや布絵などを制作しています。作り方をレクチャーする体験ワークショップも提供します。
最初に完成したラケー駅(Ga La Khe)
2A号線で最初に完成した駅で、2017年5月にモデル駅として見学できるように公開されました。クアンチュン(Quang Trung)通り、ヴァンケー(Van Khe)通り、レーチョンタン(Le Trong Tan)通りの交差点付近に位置し、周辺には新しく登場した住宅街やハドン区人民委員会本部があります。
メーリンプラザハドン/Me Linh Plaza Ha Dong
駅から約800m
住: To Hieu, Ha Dong
各種のショップや飲食店に加え、映画館、大型スーパーマーケット、コンベンションセンターなどが揃った複合施設です。建物の手前にはノイバイ国際空港行き68番バスの始発乗り場があります。
今後の開発に期待できるヴァンケー駅(Ga Van Khe)
これから発展していく新興エリアに位置するため、周辺はそれほど飲食店や娯楽施
設が設置されていません。近くにはベトナム鉄道公社管轄の3級駅であるハドン駅(2A線のハドン駅とは別)があり、主な役割として荷物の積み下ろしを行っています。
フェニカー大学/Truong Dai Hoc Phenikaa
駅から約1.6km
住: Nguyen Trac, Ha Dong
2007年に設立され、面積14haのキャンパスに日本語学科を含む17学部を擁する私立大学です。ハノイで最も最新設備を備えた大学の1つであり、日本をはじめ多くの国の企業や教育機関と提携しています。
旅の最終目的地イエンギアー駅(Ga Yen Nghia)
2A号線の終点駅です。ハノイ郊外や他省へのバスを運行しており、バス高速輸送システム(BRT)の終点でもあるイエンギアバスターミナルのすぐ隣に位置するため、簡単に乗り換えることができます。
ホーチミンルート博物館
Bao Tang Duong Ho Chi Minh
駅から約850m
住: Km 15, Quoc Lo 6, Ha Dong
ベトナム北部からラオス、カンボジアを経由して南部に至る後方支援道路網であり、戦争中にベトナム人民軍に人員と物資を提供するために活用されたホーチミンルートの歴史を伝える博物館です。
ハノイ市は2050年までのビジョンとして、全長410kmの都市鉄道10路線の建設を計画。ハノイ都市鉄道網の完成につれ、公共交通機関の利用者数が35~45%に増加すると予想されています。地域の経済発展に貢献するとともに、交通渋滞や環境汚染を緩和し、都市環境の改善に繋がることが期待されています。
2023年8月に開催されたハノイ鉄道管理委員会によると、3号線はニョン(Nhon)~カウザイ(Cau Giay)の高架区間の工事はほぼ完了し、2024年4月末の運行開始を目指して試験運行を実施中です。カウザイ~ハノイ駅の地下区間は現在建設中で、2027年の開通を予定。また、1号線は、日本の政府開発援助により技術設計が行われています。