1000年の文明の土地にあり、長い歴史を持つソンタイ（Son Tay）市社。現在でもベトナム北部の古き良き時代の風景を残しており、その歴史的・文化的価値がベトナム内外からの観光客を魅了しています。
ハノイからの日帰り旅行にぴったり
都会の喧騒から離れてひとときの休息を
ソンタイは、ハノイ市に属する市社です。ハノイ中心部から西へ約40kmの郊外にあり、簡単に訪れることができるため、家族や友達同士で週末を過ごす旅先として多くの人に選ばれています。
ソンタイ市社は総面積113.5k㎡で、紅河、ティック河、国道21A号線、32号線、省道414号線、413号線など、ハノイ中心部、紅河デルタ地方、北西部地方を結ぶ多くの水路と道路があります。歴史書によると、ソンタイという地名は500年以上前に存在し、1965年、ソンタイ市社とソンタイ省のほかの郡はハドン（Ha Dong）省と合併し、ハタイ（Ha Tay）省の一部となりました。合併と分離を何度も繰り返した後、2008年にハタイ省全体とともにハノイに合併されました。
ソンタイは歴史的伝統が豊かな地として知られ、多くの古代文化遺跡が残されています。美しく穏やかな自然景観、 多様な食べ物に恵まれ、ソンタイ観光は近年、本来の可能性を発揮して活況を呈し
ています 。
ソンタイへの行き方
ハノイ中心部から近いため、行き方はさまざまです。自家用車を持っていない人は、バスのほか、タクシーやグラブ（Grab）などの配車アプリ（片道約6万VND）でもかんたんに訪れることができます。
バス
● 20B番
ミーディン（My Dinh）バスターミナルで乗車（片道9000VND）
● 71番
カウザイ（Cau Giay）バスターミナルで乗車（片道2万VND）
時の流れが止まったかのような
国家歴史文化遺跡のドゥオンラム村
紅河からわずか数kmのところに位置するドゥオンラム（Duong Lam）村は、ハノイ近郊の最も古い村の1つです。伝統家屋、村亭、ガジュマルの木など、ベトナム北部の古代村の特徴が残されており、2006年にはベトナム政府より国家歴史文化遺跡に認定されました。
面積約800ha、人口8000人以上のドゥオンラム村は、穏やかな雰囲気に包まれ、ベトナム北部の典型的な農村の生活様式を展示する生きた博物館のような場所です。9つの集落で構成されており、古代村として国家歴史文化遺跡に認定されたのは、互いに隣接するモンフー（Mong Phu）、ドンサン（Dong Sang）、カムティン（Cam Thinh）、ドアイザップ（Doai Giap）、カムラム（Cam Lam）の5の集落からなるエリアです。フンフン（Phung Hung ／ 馮 興）王とゴークエン（Ngo Quyen ／吳權）王の出身地であることから、「2王の地」としても知られています。
ドゥオンラム農村集落保存プロジェクト
ベトナム政府は経済発展により伝統的な住居の景観が失われることに危機感を抱き、2001年6月に文化遺産法を制定しました。その後、ドゥオンラム村の保存事業が2003年頃から始まり、昭和女子大学国際文化研究所と奈良文化研究所が要請を受け保存対策調査を進めました。2008年1月には国際協力機構（JICA）が協力するかたちとなりました。
その結果、多くの家屋が修復され、次第に観光客が増加。結果的にドゥオンラム村の保 存プロ ジェクトがユネスコ（UNESCO）に評 価され、2013年2月、ユネスコよりアジア太平洋文化遺産保護賞で優秀賞を受賞しました。
住: Duong Lam, Son Tay
営: 8:00 ～ 17:00
料: 2万VND
歴史の香り漂う街並みを散策しよう！
ドゥオンラム村の主要観光スポット
モンフー亭／ Dinh Mong Phu
村の中央には、380年前に建てられたとされる、1800ｍ ²の広さのモンフー亭があります。ベト＝ムオン（Viet-Muong）建築様式が特徴で、地面から木製の床を張り出した高床式住居を模しています。また、村の守護神としてソンティン（Son Tinh／山精）が祀られています。伝説によると、村の最も高い場所にある龍の頭の特徴を持つ土地に建てられ、両側の2つの井戸は龍の目、2つの流路は龍の2本の髭を象徴しています。
テーさんの伝統家屋／ Nha Co Ong The
ハーヒューテー（Ha Huu The）邸の伝統家屋は300年以上前に建てられ、母屋と庭を含めた総面積は約400m²。建築様式から、木枠、赤瓦、土壁、焼き石の床など先人が残した建築資材に至るまで、家の細部はほぼそのまま残されています。13世代にわたって生活習慣や家族の伝統が代々守られており、日本の味噌に似た大豆ともち米を発酵させた調味料「トゥオン／ Tuong」作りの技術も受け継がれています。
フンさんの伝統家屋／ Nha Co Ong Hung
1649年に建築の伝統家屋で、12世代にわたって居住しています。門はラテライトで造られ、扉は簡単に取り外せるように設計されています。母屋は5つの区画で構成され、中央の3区画は祖先崇拝や接客の場所であり、隣の2区画は寝室として使われています。木造の天井には、精巧な龍の模様が彫られており、室内には、磁器の壺、磁器の鉢、三本足の青銅製の盆など、文化的・歴史的価値のある骨董品が数多く飾られています。
ミア寺／ Chua Mia
17世紀に建てられ、芸術的価値がある287の仏像を展示・保存している寺院です。ドンサン集落の中央にあるラテライトの丘の上に建てられ、正式名称はスンギエム（崇厳）寺です。この土地はかつてミア（Mia）と名付けられたため、ミア寺と呼ばれるようになりました。三門のから敷地内に入ると、9階からなる高さ13mの仏塔があり、仏舎利を保存する場所にもなっています。
フンフン亭／ Dinh Phung Hung
布盖大王（Bo Cai Dai Vuong）と呼ばれるフンフン王は、カムラム集落で生まれ、中国の唐に対抗するために反乱軍を組織して791年に国土を開放させました。その偉大な功績を祀るために、村人たちは祠堂を設立し、王室から数多くの冊封を受けました。フンフン王を祀る祠堂はベトナム各地にありますが、その中でもここが最も規模が大きく、建設年代は現在でも不明です。
ゴークエン祠堂＆廟／Den Tho & Lang Ngo Quyen
1000年近く続いた中国の支配から解放し、国を統一して王政を築いたゴークエン王を祀るため、村人によって建てられた祠堂と廟です。寺院と廟はそれほど大きくありませんが、周囲の敷地は広々としており、多くの樹木が植えられています。2011年にベトナム自然環境保護協会によって遺産の木として認定された敷地内にある18本の木立は、フンフン王とゴークエン王が象と軍馬を繋いだ場所だという伝説があります。
タムホアザンヴァンミン（探花江文明）祠堂
Nha Tho Tham Hoa Giang Van Minh
17世紀に中国に派遣されたベトナム使節ザンヴァンミンを祀る祠 堂 で す。面 積400m²の 本 堂 や、門、庭 園 な ど は、グ エ ン（Nguyen／阮）朝の建築様式や装飾模様が取り入れられています。本堂には、対聯、石碑、香炉などの貴重な品々が残されています。毎年旧暦6月2日には、村民、地方当局、ザン一族の子孫などが集まり、ザンヴァンミンの偉大な功績を記念する行事を行います。
54の民族が一堂に会する丸一日遊べる民族文化観光村へ
ベトナム全土の54民族の伝統的な文化価値を保存・展示し、ソンタイへの観光を促進する場所でもあるベトナム民族文化観光村。各民族の生活、文化、信仰を再現するために、さまざまな民族の人々が活動しています。
ベトナム民族文化観光村は、54の民族の居住地の景観や生活様式を再現したドンモー＝ガイソン（Dong Mo‒Ngai Son）観光地区の一部です。総面積は205haで、集団と語族によって4つのエリアに分かれています。現在も開発が続けられており、将来的にはさらに魅力的な観光地へと成長する見込みです。新年などの特別な日には、イベントや祭りが開催され、民俗遊びや独特の踊りを体験することができます。
ベトナム民族の文化財だけでなく、エッフェル塔や万里の長城、エジプトのピラミッドなど、世界の有名な建築物の模型も展示されています。娯楽エリアは、スリル満点の乗り物、ゴルフコース、歩行者天国などが充実しています。
エリア 1
ターイ（Tay）族、タイ（Thai）族、モン（Mong）族など、東北部、北西部、北中部の山岳地帯に居住する28民族の文化財と景観を再現
エリア 2
バーナー（Ba Na）族やエーデー（E De）族など、南中部地方、チュオンソン（Truong Son）地方、中部高原の高地と丘陵地帯に居住する18民族の文化財と景観を再現
エリア 3
チャム（Cham）族、クメール（Khmer）族、チュール ー（Chu Ru）族、チョーロー（Cho Ro）族の4民族の文化財と景観を再現
エリア 4
キン（Kinh）族、ホア（Hoa）族、ガイ（Ngai）族、サン
ジウ（San Diu）族の4民族の文化財と景観を再現
| ●各民族の民俗舞踊や民俗音楽を観賞 ●機織り、編み物、彫刻などの伝統工芸品作りを体験 ●ホームステイでキャンプファイヤーを堪能 | ●羽根つき投げや竹馬歩きなどの伝統的な遊びを体験 ●おこわ作り、竹筒飯作り、コーヒー豆の焙煎など、民族の食文化を体験 ●山菜、水牛の干し肉、トウモロコシ酒、錦織製品などの手土産を購入 |
住: Dong Mo, Son Tay
営: 8:00 ～ 11:00 ／ 13:00 ～ 16:30
料: 3万 VND
豊かな歴史と文化をより深く知る
押さえておきたい村外の名所たち
浮き沈みのある長い歴史を持つソンタイ。ドゥオンラム村のほかに、何百年も前に建てられた、昔ながらの地元の人々の生活や信仰を映し出すスポットは盛りだくさんです。
ソンタイ古城／Thanh Co Son Tay
国内随一の軍事建築
1822年、グエン（Nguyen／阮）朝のミンマン（Minh Mang／明命）王の指示によって建設され、タンロン城を守る重要な軍事基地の1つです。四角形の構造で、一辺の長さは約400m、城壁の高さは約5m、幅は約4mで、主にラテライトを積み重ねて造られています。南、北、東、西の4方には出入りするための前、後、左、右と名付けられた門があります。それぞれの城門には守衛塔が建てられ、各門の前にはカノン砲が2つずつ設置されました。周囲には、深さ3m、幅20m、周囲約2000mの堀があり、南西方面でティク川につながっています。敷地内には、兵士の監視塔としても機能した高さ18mの旗塔と、巡回する際に王の宿泊先として使われたキンティエン（Kinh Thien／敬天）殿があります。
ヴァー祠堂／Den Va
1000年以上の歴史を持つ霊験あらたかな祠堂
ドンクン（Dong Cung／東宮）としても知られるヴァー祠堂は、山精を祀っており、ベトナムが唐の支配下にあった頃に建てられたとされています。敷地は約2000ｍ²で、高さ2m以上のラテライトの壁に囲まれています。風水理論によると、日の出に向かって泳ぐ亀の形をしている丘の上に位置し、何百本もの木々に囲まれ、四季を通じて緑に溢れています。地域内に最大の祭りの1つであるヴァー祠堂の祭りは、毎年の旧暦1月と9月に開催され、地域内外から多くの人々を集めています。
イグエン（開源）寺／Chua Khai Nguyen
改修後は常に賑わいを見せる寺院
16世紀初頭に建設されたと伝えられる寺院。2003年に地域内外の仏教徒の寄付により大規模な修復が行われ、より広く注目を集めてきました。2015年に起工された高さ70m以上、台座の広さ1200m²にも及ぶ東南アジア最大の阿弥陀仏像と、本堂にある2000体近い各種の像が見どころです。古代と現代が調和した建築様式を持ち、正門と敷地の間には長方形の湖があり、橋でつながっています。毎年、修養会が開催され、あらゆる年齢層の数千人の参加者が集まります。
地元食材を活用した郷土料理に舌鼓を打つ
ソンタイの名所を巡り、ドゥオンラム村を訪れた後は、ランチやディナーを楽しみたいところ。落ち着いた素朴な空間で、新鮮な地元の素材を使った料理を堪能しましょう。
ドゥオンラム村キッチン
Bep Lang Duong Lam
ドゥオンラム村にあり、かつてのベトナム北部の田舎の代表的な料理を提供するレストラン。薪火を使った調理法を取り入れ、昔ながらの素朴な台所を再現しています。主に煉瓦と木材で造られ、1階は開放的なオープンスペースで、2階は冷暖房が完備されています。大人数でも対応可能で、旅途中の昼食休憩にぴったりな立ち寄り先です。
住: 8 Xom Dinh, Mong Phu, Duong Lam
電: 035-590-1410
営: 月～金曜 8:00 ～ 16:30、土・日曜 8:00 ～ 21:00
アートを通じてその地の魅力を発見
連棟式住宅の元の構造は残したままで改築され、2022年末に開設されたアートコンプレックス。ソンタイの歴史と文化に触れる機会を増やし、創造性を刺激する芸術活動の開催が期待されています。
ドアイ・クリエイティブ＆ドアイ・コミュニティ
Doai Creative & Doai Community
ソンタイの旧称「ドアイ／ Doai」を取り入れたドアイ・クリエイティブは、国内外の観光客、特に子どもたちがソンタイの伝統工芸や芸術を体験できるクリエイティブな空間を提供するアートスペース。地元の歴史的・文化的な価値を伝える木彫り、瓦への絵画などの芸術活動やワークショップを開催し、休憩したいときはドリンクも用意。ドアイ・コミュニティは、ドアイ・クリエイティブの価値観を継承・拡大するもので、芸術・文化愛好家一般の交流の場であり、パフォーマンス公演、芸術作品の展示会などを行うギャラリーです。
