ハノイ、ホアンキエム湖で、大亀伝説に想いを馳せる。

ベトナムの人が愛する「還剣湖伝説」について

ホアンキエム湖の亀はベトナムハノイの人々にとって非常に神聖なものとなっています。
それは「還剣湖伝説」に由来するものではないでしょうか。

時は15世紀、かつてベトナムが中国支配下にあった時代に初代皇帝のレ・ロイが竜王から贈られた剣（順天刀）を手に入れ、明軍との戦いで勝利し、明王朝を追放。その後、李王朝を樹立。
その後、レ・ロイがホアンキエム湖で神の使いである大亀に剣を返還した、という有名な伝説です。

大亀の正体「シャンハイハナスッポン」

しかし、大亀の話は伝説の中だけでの話ではなく、実際にこの湖にはかつて大亀がいました。
その正体は「シャンハイハナスッポン」。
分類としては、カメ目スッポン科ハナスッポン属になり、淡水に生息する亀の中では世界最大の大きさの亀となります。
そのため、神話に登場する大亀のモデルはこのシャンハイハナスッポンではないかとされているようです。
ホアンキエム湖には、かつて2016年まで生息していました。（※この亀の年齢は約200年と推定）

シャンハイハナスッポンは2021年現在、絶滅危惧種

この巨大なシャンハイハナスッポンは、国際自然保護連合（IUCN）によって絶滅危惧種に指定されています。
古代には、中国の長江や太湖に広く分布していたとされていますが、20世紀の最初の数十年で生息数が激減していきました。
原因としては、70年代から90年代にかけて食用・薬用目的での捕獲や、ダム建設による生息地の破壊や水質汚染とされています。
また、ベトナム戦争中の1967年時にはホアンキエム湖での漁業は許可されたようで、それも個体数激減に起因するものであったようです。

残個体数は世界で数匹のみ

– ベトナム –

ドンモ湖（Dong Mo Lake）[ソンタイ, ハノイ]

メス一匹（唯一野生）86kg。実際には2匹の亀の目撃情報もあり、おそらく数匹以上生息している可能性もある。

スアンカイン湖（Xuan Khanh Lake）[ソンタイ, ハノイ]

大亀の目撃情報あり。種類や大きさや性別は未確認。今後調査対象になっている。

ホアンキエム湖（Hoankiem-Lake）[ハノイ]

最後の一匹が2016年1月19日に遺体で発見。その後、3年かけて標本化され、ハノイの玉山祠に展示。体重169kg。

それまでに展示されていた亀は1967年時に死亡したシャンハイハナスッポン（上写真）。

– 中国 –

蘇州動物園 [蘇州, 中国]

21年現在オス1匹。メス1匹は2019年4月13日に死亡。

ホアンキエム湖に大亀が戻る日を

以上が「還剣湖伝説」のモデルになった大亀の正体です。
現在、ベトナムでは数匹の生息が発見されているため、今後繁殖が期待されています。
繁殖に成功し、いつの日かまたホアンキエム湖に大亀が戻ってくる日を願います。

余談ですが、2019年にはホアンキエム湖の体重約15kgの亀を捕獲しようとした男が逮捕される事件がございました。
同種ではないにせよ、ホアンキエム湖にはまだ亀がいるということに何かホッとした気持ちになりました。

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