日本のように1人で晩酌をする行為は世界的にもめずらしいとされており、ベトナムでもその習慣はありません。ベトナムのローカルレストランなどで一人酒をしていると奇異に見られることもあるでしょう。今回はベトナムにおけるお酒の位置付けと飲み方についてお話します。
酒はみんなで楽しむもの
ベトナムの大衆居酒屋などへ行くと、大きな声で「モッ・ハイ・バー・ゾー(乾杯)!」と叫んでいるのを聞くことがあります。ベトナムでお酒は一般に「大勢でワイワイ楽しむもの」と考えられており、1人で酒を飲むという習慣がありません。なので、晩酌として毎日一人酒をしている人はアルコール中毒のような問題があるのでは?と思われることもあります。カウンターで一人酒を楽しむようなスタイルのバーは値段の高さ以外に、そういった文化的背景があるので浸透しにくいのが現状です。
ベトナム人の飲み方
基本的に複数の人数で飲むことが普通のベトナムでは、それに沿った飲み方の作法があります。ベトナムのお酒は30~40度とアルコ―ル度数が高いのでショットグラスを使い、飲むたびに乾杯をする習慣があります。乾杯は全員でするだけでなく1対1のときもあり、飲む量が多い人ほど乾杯する回数が増えることになります。乾杯をせずに酒を飲むのは一般的に失礼とされ、また乾杯を勧められた側もグラスに入った酒を飲まないのは無粋な振る舞いだと考えられています。こういった習慣はお酒が弱い人にとって中々ツライもので、会社のイベントや結婚式、その他の催し事などでベトナム人の飲み会に参加したことがある日本人(特に男性)はそれを痛感することになります。これも一種のベトナム式洗礼と言えるでしょうか。
ベトナム人が�人で酒を飲むとき
そんなベトナム人が1人で酒を飲むのはどんなときでしょうか。それは「ヤケ酒」です。ベトナム人にとって1人で酒を飲むという行為は「ツライ」、「悲しい」というイメージが先行しますので、あまりポジティブに見られることはありません。トレンディドラマで男性が1人でヤケ酒をあおって泥酔したり、女性が涙を流しながら1人でお酒を飲むシーンは定番となっています。私も独身時代にトナム人の同僚からお酒をもらった際は、「悲しいときに家で飲んでください(笑)」とよく言われたものです。
ベトナムの日本料理店ではおひとりさま用の席で一日の疲れを癒すべく、夕食と一緒にお酒を嗜んでいる日本人がよくいますが、これもベトナム人には見られない光景です。
著者
稲田 琢磨
SESSA VIETNAM CO.,LTD代表
プロフィール
ベトナムで7年ほど人材関連の仕事に従事し、2021年人事コンサルティング会社SESSA VIETNAMを企業。「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などのサービスを中心に企業、求職者向けの人事コンサルティングを展開。
日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。座右の銘は「為せば成る、なるようになる」
【公式HP】https://www.sessa-jp.com