ベトナムのお年玉文化

 旧正月(テト)文化のベトナムでは、1月に入るとテトに向けた本格的な準備が街の至る所で見られます。子どもから大人まで気分が高揚するテトで、子どもにとっての楽しみは何といってもお年玉でしょう。今回はベトナムのお年玉文化について紹介します。

ベトナムのお年玉

ベトナムでも日本と同じようにお年玉文化があります。ベトナム語では「Lì Xì(リーシー)」と呼ばれ、テト前になるとリーシーを入れるポチ袋がいろいろな場所で販売されます。基本的にリーシーは大人から子どもへあげますが、大人に対してあげることもめずらしくありません。特に身内で日頃から世話になっている人や、収入のないお年寄りにあげることがよくあります。

お年玉の相場

地域や収入、生活環境などにより異なるので一概にはいえませんが、あげる子どもの数が多い田舎などでは1万~10万VND辺りが相場でしょうか。田舎では親族が同じエリアに固まって住む傾向があるので、数十人に対してお年玉をあげるなんてこともザラにあります。現金収入がそれほどない家でも、正月の挨拶に来た子ども達にリーシーをあげないのは憚られるので、少額紙幣の札束を持って出迎える光景はテトあるあるです。また赤色は縁起が良い色として認識され、赤色の5万VND札はリーシーとして好まれています。こういったことからテト前になると5万VND札を大量に蓄える人が全国で発生し、一時的に市場の5万VND札が不足するという事態に見舞われます。

会社でのお年玉

ベトナムの会社ではボーナスとは別にリーシーとして少額を渡しているところもありますが、上司が身銭を切って自分の部下たちにリーシーを渡すこともあります。額は飲み物代程度のもので、年明け最初の仕事日に新年の挨拶と共に渡されます。上司から部下へのリーシーはテトのお祝いを表現することのほか、今年1年間部下との良好な関係を築くためのパフォーマンスにもなります。日本人が同じようなことをやった場合、たとえ少額であったとしても自分たちのテト文化に倣ってくれていることや、実際にお金をもらえたという事実から喜ばれることは間違いありません。

テトはベトナム人にとって最大のイベントで、「ベトナム人はテトのために生きている」なんて極端なことを言われることもあります。近年は経済成長に伴う娯楽の増加や価値観の多様化などから、かつてほどテト命なベトナム人は減ったように感じますが、それでも多くのベトナム人にとって楽しみな時期であることは変わりません。テト期間中は店なども閉まることから日本人は国外に出ることが多いですが、敢えてベトナムに留まり、テト独特の雰囲気を肌で感じるのも一興です。

著者

稲田 琢磨

SESSA VIETNAM CO.,LTD代表

プロフィール

ベトナムで7年ほど人材関連の仕事に従事し、2021年人事コンサルティング会社SESSA VIETNAMを企業。「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などのサービスを中心に企業、求職者向けの人事コンサルティングを展開。
日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。座右の銘は「為せば成る、なるようになる」
【公式HP】https://www.sessa-jp.com

Profile Picture

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!