ベトナムのハノイに関連する記事を見ると、ハノイにはたくさんの湖があるとよく紹介されています。しかし、日本人の感覚的にはその大きさから、湖というより池では?と思うことが多々あり、日本語を話すベトナム人とコミュニケーションを取ると、この辺りの認識の差が顕著に表れます。今回はベトナム語と日本語の「湖」と「池」の定義について紹介します。
ベトナム語の湖「hồ」
ベトナム語では、日本人が考える湖と池、どちらも「hồ(ホー)」と称されます。言葉の定義としては「一定の深さがある淡水が溜まった場所。自然物、人工物を問わない」とされています。この定義に則れば公園にある小さい池も「hồ」になりますし、琵琶湖のような大きさレベルでもやっぱり「hồ」と言われます。ベトナム語では湖と池の区別に面積的なものがないようです。
日本語の池に近い「ao」?
一方で面積的に日本語の池に近い、水が溜まった場所として「ao(アオ)」というものがあります。これは田舎へ行くとよく見られるもので、日本人が見れば池と感じる人が多いでしょう。では先ほどの「hồ」とは何が違うのか。それは使用目的です。その定義は「一定の水が溜まった場所で、魚や水産物の養殖、生活用水として使われる」とありますので、水が何かしらの目的で使用されていれば「ao」、されていなければ「hồ」ということで理解できそうです。ちなみに、釣り堀なども「ao」と呼ばれます。
溜め池「giếng」
街中で見る水が溜まった場所で「giếng(ジエン)」と言うものがあります。これは井戸の意味で、日本でよく見る井戸と同じものを指します。また、10m四方前後の溜め池も「giếng」と呼ばれることがあります。これは、建設段階で井戸を掘る時と同じ要領で作り、地下水によって水が供給されている溜め池となります。場所によってはこれを生活用水として使用しているところもありますが、上の「ao」とは異なり、使用目的や水の供給源が地下水かどうかが区別の基準となっています。
このように、日本人は面積や深さから湖と池を区別する場合が多いのに対し、ベトナム人はその使用目的に応じて呼び分けていることが分かります。これらの違いから、日本人的には池と認識していても、ベトナム人はそれを日本語で湖と表現することがめずらしくありません。ベトナムでレイクビューと聞いて期待していたところ、実際はただの池の眺めだった、なんてことも普通にあります。
著者
稲田 琢磨
SESSA VIETNAM CO.,LTD代表
プロフィール
ベトナムで7年ほど人材関連の仕事に従事し、2021年人事コンサルティング会社SESSA VIETNAMを企業。「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などのサービスを中心に企業、求職者向けの人事コンサルティングを展開。
日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。座右の銘は「為せば成る、なるようになる」
【公式HP】https://www.sessa-jp.com