日越の昔話の違い

多くの人は子どもの頃、自国の昔話に慣れ親しんできたのではないでしょうか。ベトナムにも教訓を備えた昔話がたくさんあり、誰でも一度は読んだことがあるという有名な昔話は少なくありません。そうしたベトナムの昔話を読んでみると、日本の昔話との違いや特徴に気付くことがあります。今回はベトナムの昔話によく見られる特徴3点を紹介します。

主人公は若者

ベトナムの昔話に出てくる主人公は大抵が年頃の男女または子どもです。日本の昔話のようにお爺さんとお婆さんが主人公になるような話は基本的にありません。ベトナムの昔話でお爺さんというと、困った主人公を助ける仙人のような役どころを頭に浮かべるベトナム人が大半かと思います。日本の昔話に出てくるお爺さんとお婆さんに比べると、比較的地味な役どころが多い印象です。あるベトナム人が言うには、お爺さんでなくても主人公として成り立つ話なら、ベトナムでは若者が主人公として描かれるだろうとのこと。「おむすびころりん」や「笠地蔵」などの話もベトナムでは青年が主役として描かれるということですね。

人間と動物のすみ分け

「ウサギとカメ」のように、人間以外を擬人化した昔話はベトナムにもあります。しかし大きな違いとして、日本の昔話のように人間とそれ以外の生物が対等な立場でやり取りをする作品がほとんど見られない点が挙げられます。例えば「桃太郎」では人間と動物が普通に会話をしていますが、こういった描写はベトナムの昔話では見られず、動物が擬人化された作品では人間は登場しないのが一般的です。神様的な存在として動物が人間に言葉を授けるといった描写はあるものの、共に行動をしたりといったものはありません。

家族に関する描写

ベトナムの昔話では結婚や夫婦、家族に関する描写が比較的多いように思います。物語の核心に関係がなくても、結婚や出産、夫婦円満といった家庭に関する出来事がよく盛り込まれています。このあたりはベトナム人の家族愛や家庭に関する価値観がよく現れていて、幼少期からそうしたものに触れていると、自然とその思想が形成されやすくなるのではないでしょうか。一方、日本の昔話では作中で結婚シーンや家族関係などの描写はあまりないように思われます。桃太郎を読んだあるベトナム人に曰く「ベトナムだったら、鬼を退治した後に美しい娘と結婚して子どもにも恵まれて幸せに暮らした、という終わり方になるだろう。」とのこと。確かにそれはそれできれいな終わり方かと思いますが、何が幸福かという価値観がベトナムの昔話には如実に現れているように感じます。

著者

稲田 琢磨

日本国社会保険労務士有資格者

SESSA VIETNAM CO.,LTD代表

プロフィール

ベトナムで10年以上、人材・人事業務に携わり、現在は自ら起業した「SESSA VIETNAM(セッサベトナム)」にて、主に「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などの人事コンサルティングサービスを展開。日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。ベトナム人妻と2人の子どもを育てながら、日越の二言語教育に日々奮闘中。
【公式HP】https://www.sessa-jp.com

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