ベトナムで生活していると標準で使われているペンの色が青であることに気付きます。「なぜ青なの?」とベトナム人に聞いても「習慣的にそうなっているから」で片付けられてしまいがちです。今回は青インクに関する国の規定、青インクが普及した背景、青インクに対するベトナム人の認識について書きたいと思います。
公的書類は青インクでサイン
ベトナムの公的書類におけるサインは青インクを使用しなければいけないことが、議定30/2020/NĐ-CPに明記されています。かつての法令では青インクの指定がなかったので、黒インクでも認められていたわけですが、法改正により青インクの使用が義務付けられました。なぜそのような改正があったかですが、通常行政関係の書類は黒字で作成されるので同じ黒インクでサインをすると直筆なのかコピーなのかが見分けにくいという点や、黒以外の色を指定する際に赤はスタンプの色なので、既に一般的に使用されている青インクにすることが便宜上合理的だとの判断があったようです。
子どもの頃から青で書く習慣
ベトナムでは学生がノートに板書をとったり、試験の解答用紙に記入するときも青のボールペンが使われていますが、公的な試験(入学試験など)で特に青インクを使用することが義務付けられているわけではありません。つまり黒インクを使用しても問題ないわけですが、従来の慣習から青インクのペンを使用するのが一般的となっています。これには青いインクで清書された書類は一番見栄えがいいという観念がベトナム人にはあり、そういったところも青が好んで使われる理由に関係していると言われています。
そして黒よりも青が普及した歴史として、当時黒のインクより青のインクのほうが値段が安かった、黒のインクより青のインクのほうが色褪せにくい、黒は毛筆で使用される色でそれ以外の筆記には青が好まれた、など諸説ありますが本当のところははっきりとしていません。
因みに試験などでボールペンを使用するのが一般的なのは日本と異なるところで、間違えた場合は修正液などで訂正します。鉛筆やシャープペンシルを試験に使わない理由は容易に消えないようにするための他に不正防止にも一役買っているそうで、私がこれを聞いたときは「カンニングに鉛筆だろうがボールペンだろうが関係ないのでは?」と思いましたが、解答提出後に何かしらの改ざんが容易にされないためだそうです。
ベトナムの事務所などは通常黒のボールペンより青のボールペンのほうがストックが多いですし、とりあえずベトナム関連の書類については黒より青のペンで記入する習慣をつけておいたほうが無難でしょう。
著者
稲田 琢磨
SESSA VIETNAM CO.,LTD代表
プロフィール
ベトナムで7年ほど人材関連の仕事に従事し、2021年人事コンサルティング会社SESSA VIETNAMを企業。「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などのサービスを中心に企業、求職者向けの人事コンサルティングを展開。
日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。座右の銘は「為せば成る、なるようになる」
【公式HP】https://www.sessa-jp.com