ベトナムで帝王切開による出産が増えている理由

平均年齢が30歳前後のベトナムでは、毎日のように妊婦さんと接する機会がたくさんあります。身近なベトナム女性の出産を経験したことがある人も多いのではないでしょうか。仲が良ければ経膣分娩なのか帝王切開なのかと聞かれることもありますが、帝王切開率が高いと感じたので、今回はそのあたりの研究について書いていきたいと思います。

すべては、私の友人であるベトナム人女性の話から始まりました。

帝王切開率が高いのはベトナム人も何となく自覚があるようですが友人のベトナム人女性はそれについて、このようなことを言っていました。
「ベトナム人女性は骨盤が小さいので普通分娩が難しいんです。」
スリムな女性は確かに多いですが、生物学的に見て正常な出産が難しい困難というのも疑問に思いましたので知り合いの産婦人科に話を聞いてみることにしました。

帝王切開を希望する女性が増えている

2020年のベトナムの帝王切開率は27.1%で、WHOの世界平均である約30%(日本は約24%)を下回っています。ただし、この割合は過去10年間で50%近く増加しており、40歳未満の女性の半数以上が帝王切開を経験していると言われています。ここ数年、私の周りで出産した女性の約半数が帝王切開だったので、私も同感です。また、帝王切開率が上昇する根拠として、以下の要因が考えられます。

・医療技術の開発

医療技術や衛生面の 向上により帝王切開のリスクが減り、帝王切開を選択する際の障壁が減ったと言われています。痛みに耐えきれずに自ら帝王切開を希望する妊婦も多く、医師の対応が難しい場合が多いようです。また、第1子を帝王切開で出産した場合、次の出産も帝王切開となるため、この率は自動的に高くなります。

・経済の発展

帝王切開による出産は普通分娩よりも費用がかかりますが、経済発展により帝王切開による費用を捻出できる層が増えたと言われています。実際帝王切開による出産は国立病院よりも最新の医療設備が整っている私立病院のほうが多くなっており、出産にそれなりの金銭を支払える層が増えたことが窺えます。

産婦人科医の話では、確かに昔と比べて帝王切開による出産のリスクは下がったものの、リスクがあることには変わらないので痛みなどの理由で安易に選択したいように啓発しているとのことです。また切開技術の向上や術後のケアなどから切開跡が目立ちにくくなったことも心理的ハードルが下がる一因とも言われています。

著者

稲田 琢磨

SESSA VIETNAM CO.,LTD代表

プロフィール

ベトナムで7年ほど人材関連の仕事に従事し、2021年人事コンサルティング会社SESSA VIETNAMを企業。「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などのサービスを中心に企業、求職者向けの人事コンサルティングを展開。
日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。座右の銘は「為せば成る、なるようになる」
【公式HP】https://www.sessa-jp.com

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