日本では何かとマイナスの意味で語られるマザコン。「お母さんの料理が一番おいしい。」「寂しいときはお母さんのことを思い出してよく泣いていた。」などなど、ベトナム人男性はこういった発言を成人しても平気でする人が多いように見受けられます。これについて世のベトナム人女性はどのように捉えられているのでしょうか?今回はそんなマザコンに関する話です。
ベトナム人女性はマザコンOK?
日本語のマザコンは「mother complex」の略として使われていますが、これは和製英語で英語圏では主に「mommyʼs boy」と呼ばれます。一方ベトナム語では伝統的な呼び方は存在しません。近年では過度に母親に偏重する男性のことをMAMA BOYと俗語的に言われたりしますが、この言い方が広く浸透しているという感じではないようです。
因みに MAMA BOYと言われるのはかなり過度なレベルで、冒頭で書いたような母親の料理を公然と褒めたり、母親を思い出して泣いた程度では呼ばれることはありません。ベトナムでは息子が母を、娘が父を愛するのは普通のことで、それをテーマにした歌やドラマなどはいつも人気があります。こういった文化性から男性がマザコンなのは当然のこととして捉えているベトナム人女性は多く、むしろ母親に無関心な男性とは温かい家庭を築けないのではないかと疑念を抱かれる可能性もあるそうです。
ベトナム人女性がマザコンに対してキレるとき
さて、そんな肯定的に語られるマザコンですが、ベトナム人女性でもマザコンに対してキレるときがあります。それは嫁姑問題が勃発したときです。ベトナムでは今でも義両親と同居という家庭が多いですが、嫁と姑が争いになることは当然あります。その際に夫が母親の味方ばかりすると妻は間違いなくうんざりします。義両親と同居するベトナム人女性の愚痴にはこの手の話題も多く、実際離婚の原因にもなっています。妻の心理としては「母親を大事にするのは当然のこと、でも私より何でも優先なのは腹が立つ。」といったところでしょうか。この点については万国共通かと思います。
因みに逆の「ファザコン」についてはそれほど問題として上がる話は聞きません。夫から酷い仕打ちを受けて愛する父に助けを求めるというような話はありますが、それなりに深刻なレベルの次元での話です。これはベトナムでは田舎を中心にまだ「嫁ぐ」という観念が強く、一度結婚して家を出ると夫側の家族と交流する機会のほうが多いというのも関係があるように思われます。
著者
稲田 琢磨
SESSA VIETNAM CO.,LTD代表
プロフィール
ベトナムで7年ほど人材関連の仕事に従事し、2021年人事コンサルティング会社SESSA VIETNAMを企業。「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などのサービスを中心に企業、求職者向けの人事コンサルティングを展開。
日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。座右の銘は「為せば成る、なるようになる」
【公式HP】https://www.sessa-jp.com