
自由の女神と聞くと、多くの人はニューヨークにあるものが思い浮かぶのではないでしょうか。フランスがアメリカの独立100周年を記念して寄贈したものとして有名ですが、同じフランス繋がりで、実はハノイのホアンキム湖にも自由の女神があった時代がありました。今回は、かつてハノイに存在した自由の女神について書きます。
ベトナム版自由の女神
1887年から1945年にかけて、ハノイにも自由の女神がありました。途中、場所は何度か変更されましたが、湖の中心に現在もある「亀の塔」の上に設置されていたものが一番目立っていたようです。ベトナム人の間では、「Tuong Ba Dam Xoe(裾の広がったドレスの西洋夫人像)」と呼ばれていました。高さは約3mほどだったので、アメリカのものと比べると小型なレプリカという感じですが、フランスの植民地時代を象徴する存在でした。自由の女神という名称からは、強烈な皮肉が感じられます。

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設置されたきっかけ
1887年にハノイで開催された博覧会で展示するため、フランス人彫刻家によって制作され、博覧会終了後にハノイ市に寄贈されたのがきっかけです。最初の1年は、現在のリータイトー(Ly Thai To)公園にあたる広場に設置されましたが、後に別のフランス人像を設置することになり、ホアンキエム湖の亀の塔の上に移されました。しかし、この設置にはベトナムの知識人や民衆から大きな反発を招き、5年ほどの設置期間を経て、クアナム(Cua Nam)庭園へと移動。そのままベトナムが独立する1945年まで設置されることとなります。
像の撤去とその後

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ベトナムの独立に伴い、フランス植民地時代の遺物と見なされた多くのものは撤去されることとなり、自由の女神もその例外ではありませんでした。撤去後、しばらくは倉庫で保管されていたそうですが、1952年に再利用として約12tの巨大な阿弥陀如来像を鋳造するための材料として溶かされることとなりました。その材料で作った阿弥陀如来像は今でもハノイで見ることができ、チュクバック(Truc Bac)湖沿いにあるグーサー(Ngu Xa)寺で静かに佇んでいます。
この自由の女神の存在は、当時を生きていない世代にはあまり知られていないそうです。ベトナムにとっては植民地時代の象徴のような像なので、あえて積極的に後世に伝えることをしなかったのかもしれません。その像が再利用されて阿弥陀如来像として生まれ変わり、現在も参拝者によって拝まれているというのは感慨深いものです。
著者
稲田 琢磨
日本国社会保険労務士有資格者
SESSA VIETNAM CO.,LTD代表
プロフィール
ベトナムで10年以上、人材・人事業務に携わり、現在は自ら起業した「SESSA VIETNAM(セッサベトナム)」にて、主に「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などの人事コンサルティングサービスを展開。日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。ベトナム人妻と2人の子どもを育てながら、日越の二言語教育に日々奮闘中。
【公式HP】https://www.sessa-jp.com

