内と外のお婆さん

先日、「Com Ba Ngoai(外のお婆さんのご飯)」という店で食事をしました。そこはベトナムの一般的な家庭料理を提供している店で、いわゆる田舎のおふくろの味的な料理を売りにしています。幼い孫をお婆さんが笑顔でおんぶしている店の商標は、見ていて微笑ましいものがあります。今回は、そんな内と外のお婆さんにまつわる話を書きます。

ベトナムでいう内と外

ベトナムでは親族の関係性を表す言葉の一つに「内・外」があります。自分から見て父方の親族は「内(Nội)」、母方の親族は「外(Ngoại)」を使って表現します。この表現から何となく想像できるとおり、ベトナムでは身内の序列として父方の親族が優先される伝統があります。例えば、旧正月テト(Tet)の元日は内の親族とのみ交流し、外の親族は2日以降というのはその代表例と言えます。昔の日本と同じく、女性は嫁げば夫側の家に入るという考えがあり、そこで生まれた子どもは内側の存在という認識でした。

孫にとっての外のお婆さん

そういった事情から、伝統的な環境で育った孫は日頃内側の親族と交流する機会が多く、外側の親族と会うのは何か特別な時が中心となります。なので、外の親族に対しては内よりも若干の距離感を抱くものですが、外のお婆さんにとっては自分の孫に変わりありませんので、時々しか会えない孫をとても可愛がるものです。会えばいつも可愛がってくれるお婆さんを、孫も嫌がるわけがありません。冒頭の店の商標は、正にそんな幼少期に見た外のお婆さんのイメージを表したものと言えるでしょう。

内のお婆さんは?

私は単に、「外側のお婆さんがやっている店」くらいの店名由来だと思っていましたが、ベトナム人曰く、仮に店名が「内のお婆さん(Com Ba Noi)」だったとしたらイケてないとのこと。伝統的に内のお婆さんは孫と同居する場合が多く、日頃の世話なども請け負っていることが普通です。毎日一緒にいると無条件で可愛がるわけにもいかず、時には怒ったり口うるさくなったりすることもあるでしょう。そんなお婆さんに対して悪態をつく孫もめずらしくありません。つまり内のお婆さんの場合、その店の商標のように笑顔でおんぶとはいかないそうです。言われて納得といいますか、私も思い当たる節はあります。

 ベトナム人は親族との関りが広く深いのは言わずと知れたところですが、そういった部分はベトナム語での呼称にも表れます。父方と母方の親族の呼び分けの他、一言で自分とその親族との関係性を表す呼称がたくさんあります。

著者

稲田 琢磨

日本国社会保険労務士有資格者

SESSA VIETNAM CO.,LTD代表

プロフィール

ベトナムで10年以上、人材・人事業務に携わり、現在は自ら起業した「SESSA VIETNAM(セッサベトナム)」にて、主に「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などの人事コンサルティングサービスを展開。日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。ベトナム人妻と2人の子どもを育てながら、日越の二言語教育に日々奮闘中。
【公式HP】https://www.sessa-jp.com

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