ベトナムの入学前教育に悩む親

小学校入学を控えた子どもが先取りで1年生の勉強を始めるのは、日本もベトナムも変わりません。しかし、最近のベトナムではこの事前学習の程度の差が家庭によって大きく、頭を悩ませる親も結構いるそうです。今回はベトナムの入学前教育について書いていきます。



入学前教育で求められるもの

日本では小学校に入る前にひらがなの読み書きがある程度できて、簡単な数字が分かるぐらいが平均的でしょうか。入学前のオリエンテーションでは、事前学習として自分の名前をひらがなで読めるぐらいのことしか求めませんが、実際のところ、それだけでは不十分だと考える保護者は多いと感じます。

一方のベトナムでは、具体的な案内などはないものの、最低限ベトナム語の読み書きと一桁の足し算、引き算ぐらいは学習して入学する子どもが多数派のようです。クラスの大半がこれらを理解して入学してくるので、担任の先生も初めて勉強する子どもに教えるというよりは、既に理解していることを確認するような授業になってしまいやすいそうです。



どこで入学前教育を受ける?

入学前教育といっても、ベトナム語の読み書きと1年生の算数なので、保護者が家で教えているのかと思いきや、多くの子どもは家庭外で学んでいます。例えば、幼稚園が時間終了後に追加の事前教育を実施していたり、現役の小学校の先生が副業として個人塾を開いていたりもします。通常、ベトナムの幼稚園は17時ぐらいまでありますので、そこからの学習となると19時頃に帰宅という、小学生の塾を彷彿させるようなスケジュールとなります。私が幼稚園の頃のことを考えるとちょっと気の毒な気もしますが、親が自宅で事前教育をしないのは、夫婦共働きの社会で時間が取りにくいということも背景にあるようです。



入学前教育の弊害?

このように、多くの子どもが小学校入学前に事前学習を行っていますが、やはり習得には個人差が伴います。「他の子がこれだけできているのに私の子は…」なんていう母親の悩みもよく聞きます。また、もう十分に事前学習ができているにも関わらず、さらに上を見て「ここまでやらせるか!?」なんていう教育熱心な親もいたりするそうです。日本では、入学前学習であまり先取り過ぎると弊害があると言われており、例えば授業が分かり切っているので教師の話を真剣に聞かず、幼い間にその意識が培われにくくなることや、周りより自分は多くの事を知っているという間違った優越感を持ちやすくなることが指摘されています。ベトナムでも同じような事象があるのか気になるところですが、今後も幼児教育は過熱していくのではないでしょうか。

著者

稲田 琢磨

SESSA VIETNAM CO.,LTD代表

プロフィール

ベトナムで7年ほど人材関連の仕事に従事し、2021年人事コンサルティング会社SESSA VIETNAMを企業。「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などのサービスを中心に企業、求職者向けの人事コンサルティングを展開。
日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。座右の銘は「為せば成る、なるようになる」
【公式HP】https://www.sessa-jp.com

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