
物を担保にお金を借りる質屋。日本では昔の金貸し業といった印象があります。街中で見かけることはなく、利用したことがあるという人も少ないのではないでしょうか。一方、ベトナムでは現在も個人で営んでいる質屋が至る所にあります。それだけ利用者が多いことがうかがえますが、どのように利用されているのでしょうか。
ベトナムの質屋とは
ベトナムの質屋は「カムドー/Cam Do」と呼ばれ、小規模な個人経営の店舗を筆頭に街中でよく見かけます。貴金属、バイク、電化製品など、あらゆるものを担保にお金を貸します。金利は店によって様々で、法律で定められた上限を超えて金利を設定しているところもあれば、金利を低く設定する代わりに手数料を高くとるといったやり方をしているところもあります。利用者は、銀行の審査が通らない人や迅速に小額な金銭が必要な人などが多いようです。

どんな時ににぎわう?
手軽にお金を借りられるということで、ギャンブルなどでの要りようで質屋が利用されることがあります。ベトナムでは一部を除いて賭博全般が違法ですが、個人間でやる賭博全てを取り締まるのは限界があります。何かしらのイベント時に個人間でやる賭博など、それらの種類は多岐にわたります。サッカーのワールドカップで勝敗に関する賭博はよく知られるところで、大番狂わせの試合があると質屋の需要が上がったり、質流れ品が大量に出たりといった事象が見られます。
学生向け質屋

注意をして看板を見ると、「学生向け質屋」というものが目に入ります。正確には、学生にとって利用しやすい質屋といったところです。大抵は大学などが多い学生街に「カムドーシンビエン/Cam Do Sinh Vien」として店を構えています。こちらは金利が比較的低かったり、かなりの小額からでも安い質入れ品で受け付けるといった特徴があります。金欠で親からの仕送りが来るまでのしのぎや、急遽必要になったお金を一時的に借りるといった場合での利用があるようです。ただ、学生が質屋を利用するというのはもちろんベトナムでもいい顔はされず、親が知ったら怒られること必至なので、こっそり利用する学生が大半とのことです。
最近は大手質屋チェーンのように店舗数が多く、最新のテクノロジーを導入した近代的なサービスを提供しているところも出てきており、個人経営の質屋は減少傾向にあります。ただ、いずれも高額な金利や取り立てなどについて問題視されることが多く、取り締まりの強化が進められています。
著者
稲田 琢磨
日本国社会保険労務士有資格者
SESSA VIETNAM CO.,LTD代表
プロフィール
ベトナムで10年以上、人材・人事業務に携わり、現在は自ら起業した「SESSA VIETNAM(セッサベトナム)」にて、主に「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などの人事コンサルティングサービスを展開。日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。ベトナム人妻と2人の子どもを育てながら、日越の二言語教育に日々奮闘中。
【公式HP】https://www.sessa-jp.com

