赤ちゃんが健やかに育つための文化や習慣はどこの国にもあるもので、ベトナムもその例外ではありません。日本人の私たちにとっては少し異様に見える習慣もあったりします。今回はそういったベトナムの赤ちゃんにまつわる迷信について紹介します。
産後、病院から帰宅まで
病院で出産して家へ帰るとき、母親と赤ちゃんのほとんどは夫や家族に付き添われて帰路に就きます。ベトナムではこの病院から自宅まで帰る道中に赤ちゃんが悪魔に狙われやすいという迷信があり、付き添いの家族は赤ちゃんが悪魔に狙われないよう護衛のような役割を果たすことがあります。例として、悪魔が近寄らないように家族が赤ちゃんの側で小刀を持って歩いたり、自宅に入る際に悪魔が入って来られないよう玄関の床に置いたろうそくの火を跨いで家に入ったりといったものがあります。私も妻が出産した際、義母とともに自宅へ向かったところ、産後で体力のない妻の代わりに私が生まれたばかりの赤ちゃんを抱き、その後ろから果物ナイフを持って義母がついてくる光景はなかなかシュールなものでした。
わざと変な名前を付ける
これは古いベトナムの習慣です。ベトナムではかつて良い名前には悪い霊がつきやすいという迷信があり、それを避けるためにわざと変な名前をつけるという習慣があったそうです。義母の話によると、例えば「タニシ」といった現代では考えられないような名前をつける親もいたとのこと。ただ、大人になっても悪い名前のままだとさすがに気の毒だと考える親も多かったようで、正式な名前はちゃんと戸籍に登録し、日頃子どもを呼ぶときの名前はあだ名として変な名前で呼ぶという親が多かったそうです。
夜、お風呂に入ると死ぬ
これは赤ちゃんに限らず、子どもあるいは大人でも言われることです。夜お風呂に入るのがなぜ危険なのか、それは給湯設備や室内の空調設備などが充実していない時代、急激な温度差による体調不良や死亡事故が多かったことから、このような迷信が生まれたのではといわれています。日本でいう、湯冷めやヒートショックに近いものを感じますね。現代でも何となくで、こういった習慣に従って夜お風呂に入るのを避けている人が見られます。
このような迷信や考えは地域差も多く、同じベトナム人同士でも共感できることとそうでないことがあります。ただ、お互いに知らない地域の風習話は面白い雑談としてベトナム人の間でも好まれています。
著者
稲田 琢磨
SESSA VIETNAM CO.,LTD代表
プロフィール
ベトナムで7年ほど人材関連の仕事に従事し、2021年人事コンサルティング会社SESSA VIETNAMを企業。「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などのサービスを中心に企業、求職者向けの人事コンサルティングを展開。
日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。座右の銘は「為せば成る、なるようになる」
【公式HP】https://www.sessa-jp.com