日本と同じ仏教国であるベトナムはお墓や埋葬の習慣で似ているところが多いですが、実際に葬式や埋葬に立ち会うと要所で違いを
認識することになります。今回はベトナムの埋葬に関してお伝えします
土葬から火葬への過渡期
ベトナムはかつて土葬が一般的な埋葬手段でした。しかし近年においては政府の奨励などもあって火葬が普及しており、都会ではほとんどの遺族が火葬を選択しています。一方の田舎では土葬をする習慣がまだ残っており、墓地に行くと土葬して間もない盛り土を見ることができます。年配の方はこれまでの習慣から自分の身内を焼くということに抵抗を持つ人が少なくありませんので、完全に火葬が浸透するのはもう少し時間がかかるとみられています。一方で現代の若年層は土葬をする際、またその後の手間などから火葬が好まれています。土葬の場合はスペースの事前確保や一定の期間が経過すると掘り起こす作業が発生することなどが主な理由で、この辺りの習慣は昔の日本の土葬と通じるものがあります。また、火葬の場合は墓荒らしに死者の臓器を盗まれる心配がない、と冗談のような本気の話を聞いたこともあります。
ベトナムでのお骨拾いは?
火葬は日本と同様に専用の火葬場で行われ、身内が故人と最後のお別れを行います。日本との大きな違いはお骨拾いがないことで、火葬が完了すると職員によって骨を納められた骨壺が遺族に手渡されます。なので、あえて骨壺の中身を見なければ、ベトナムでは故人の骨を見る機会はないということになります。ベトナム人にとって日本のお骨拾いは衝撃的なようで、自分の身内の骨をお箸で拾い上げるという話をすると驚かれます。確かにベトナムの火葬習慣を考えると、火葬後の故人を遺族が囲んで順番に骨を箸で拾っていく光景は想像しにくいかもしれません。日本人と結婚したベトナム人でお骨拾いを経験したことがある方は、「緊張して手が震えた」
と言っていました。私も初めて経験したときはそんな感じだったのを覚えています。
仏教式であれば死後の49日や400日法要も日本と同様に行われ、それに続く各法事も同じように行われます。田舎などでは結構な人数が参加することになりますが、こういった法事は親族が集まって交流する1つの良い機会で、大勢の楽しそうな食事の雰囲気は故人に対する最高の弔いにもなると考えられています。
著者
稲田 琢磨
SESSA VIETNAM CO.,LTD代表
プロフィール
ベトナムで7年ほど人材関連の仕事に従事し、2021年人事コンサルティング会社SESSA VIETNAMを企業。「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などのサービスを中心に企業、求職者向けの人事コンサルティングを展開。
日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。座右の銘は「為せば成る、なるようになる」
【公式HP】https://www.sessa-jp.com