
ベトナムのテレビ番組では外国のドラマやアニメが数多く放送されています。字幕もあれば吹き替えもあるのは日本と変わりませんが、吹き替え放送については少し異なる部分が見られます。今回はベトナムの吹き替え放送に関する話を書きます。
ワンマン声優の吹き替え放送が多い
日本の吹き替え放送との大きな違いは、吹き替えの声優が一人で全役こなしている放送が多いところです。日本でも白黒時代の洋画では声優一人が何役もこなしているのを見たことがありますが、今の時代では見られなくなりました。多くの役が登場している場面でも全員が同じ声なので、誰が喋っているのかよく分からなくなることもありますが、一人で矢継ぎ早にあらゆる登場人物の声を担当している仕事っぷりに感心します。

なぜ一人でこなすのか?
やはり予算の関係が大きいそうです。限られた予算の中で放送しようとすると登場人物の数に応じた声優を起用するのは金銭的に難しいとのこと。またそういった事情から声優自体の数も少ないので、多くの視聴者にとって吹き替えの声はお決まりの聞き慣れた人の声となります。今はまだ声優という職業に焦点が当てられる機会は少なく、一人で各登場人物の声を担当するので、「この役と言えばこの声優」といったような声優の個性に目を向けられることはありません。
棒読みのセリフ
セリフは基本的に棒読みで読まれます。日本の声優に慣れている立場からすると淡白に聞こえるものですが、ベトナム人によっては演技の入った読み方をされるよりは、棒読みの方が内容が入ってきやすいという声もあります。他にも声優一人で全役をこなす必要があるので、全てのセリフに感情を込めるのは現実的に難しいという事情もあるのかもしれません。ちなみにベトナムの吹き替え放送では、吹き替え音声の下に小音量で元の言語の音声も残す習慣があります。登場人物の感情的な部分はこのネイティブの口調っぷりから読み取り、吹き替え音声によって具体的な意味を理解していくという楽しみ方のようです。
声優というと映画やドラマの吹き替えの他、アニメなどにもありますが、アニメの声優も同様にそれほど注目を浴びる職業とはなっていません。日本のアニメ声優のような、いわゆる「アニメ声」といったものはなく、演技力も特に重視されていないようです。昔は漫画やアニメは子どもが見るものだったベトナム社会も、その世代が大人になり少し風向きが変わってきました。ベトナムのアニメに対する伸びしろは今後もまだまだありそうなので、それに伴い声優の職業も発展していくのではないかと思われます。
著者
稲田 琢磨
日本国社会保険労務士有資格者
SESSA VIETNAM CO.,LTD代表
プロフィール
ベトナムで10年以上、人材・人事業務に携わり、現在は自ら起業した「SESSA VIETNAM(セッサベトナム)」にて、主に「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などの人事コンサルティングサービスを展開。日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。ベトナム人妻と2人の子どもを育てながら、日越の二言語教育に日々奮闘中。
【公式HP】https://www.sessa-jp.com

